処刑ライダー

アメリカ
邦題処刑ライダー
原題The Wraith
公開年1986
製作国アメリカ
監督マイク・マーヴィン
主演チャーリー・シーン

概要

『処刑ライダー』は、カーアクション、SF、青春映画の要素をまといながら、その実態としてはかなり異色の超常リベンジ映画である。

ことの発端はきわめて単純かつ理不尽だ。ジェイミーとケリーは愛し合っていただけなのに、町を牛耳るパッカード一味に襲撃され、ジェイミーは命を奪われる。ケリーはその後、恋人というより所有物のようにパッカードに支配される。そしてやがて、ジェイクという謎めいた青年と黒い異形のマシンが町に現れ、パッカード軍団を一人ずつ狩り始める。

本作の最大の見せ場は、復讐の執行シーンそのものにある。未来的なフォルムの謎めいた黒い車は、相手を挑発し、恐怖を植え付け、最終的には自滅同然の死へ追い込んでいく。しかも黒い車そのものはびくともしない。とりわけ墓場の場面は印象的だ。パッカードを墓地へ押し込み、自分の墓石を見せる流れは、単なる勝敗ではなく、死刑執行の宣告として機能している。ここに本作独自のカタルシスがある。

その一方で、本作は復讐の論理そのものが精密な映画ではない。真の元凶は明らかにパッカードであり、観客の怒りも基本的には彼に集中する。ところが映画は、そこへ一直線に向かわず、取り巻きを順番に処刑していく構造を取る。しかもその取り巻きたちは、胸くその悪い連中ではあるが、パッカード本人ほどの巨悪には見えない。小物的な腰巾着、あるいはパッカードにこき使われている従属的な連中として映る場面もあり、「全員爆死させる必要があるのだろうか」という引っかかりが残る。

それでも本作が凡百のB級アクションに終わらないのは、ビジュアルの力が強いからである。チャーリー・シーンの若さと、黒ヘルメットの復讐者という造形は印象が強い。さらに、今作は何と言ってもケリー役のシェリリン・フェンの魅力が大きい。彼女が魅力的であればあるほど、奪われたものの価値が増し、パッカードの支配はより不快になる。『処刑ライダー』は、黒い車の映画であると同時に、シェリリン・フェンの魅力が作品全体の危うい官能と喪失感を支えている映画でもある。

※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領 Ver1.3(概要)」をご覧ください。

1 不条理(被害者の無実性)5/5
2 喪失(奪われたものの重さ)4/5
3 被侮蔑(加害者からの見下し)4/5
4 標的(復讐対象の明確さ)3/5
5 敵の悪(情状酌量の余地)4/5
6 後味(結末のカタルシス)4/5
7 配役(復讐者の説得力)4/5
8 演技(感情の爆発度)3/5
9 演出(執行のスタイリッシュさ)5/5
10 伏線回収(因果応報の納得感)2/5
11 倫理の納得感(観客の同調率)3/5
12 敵の歯ごたえ(難易度と落差)2/5
基礎点合計(1〜12)43/60

基礎点の根拠

各項目講評

1 不条理:5/5

ここは満点でよい。ジェイミーはケリーといただけなのに、パッカードの嫉妬と支配欲のために殺される。ケリーもまた一方的に支配される。被害者側の落ち度は極めて薄く、「平穏な日常が突然踏みにじられる」型の不条理としてかなり強い。

2 喪失:4/5

主人公本人が殺され、恋人との幸せな未来も断ち切られる。さらに、ケリーはその後もパッカードの支配下に置かれ、弟ビリーも傷つく。全家族壊滅の5までは行かないが、人生の中核を奪われる喪失としては十分に重い。

3 被侮蔑:4/5

パッカード一味は町を牛耳り、他者を見下し、暴力で支配する。ケリーへの態度は恋愛ではなく、一方的で歪んだ所有欲であり、ジェイミーの命も軽く扱う。そのナメと傲慢さはかなり強い。ただし、徹底した人格否定の5というよりは、暴力的な支配者の標準を明確に上回る4である。

4 標的:3/5

標的は国家や巨大組織ではなく、パッカードを中心とした小集団であり、その意味では十分に明確である。ただし観客の怒りの中心はあくまでパッカード個人であり、取り巻きが複数ぶら下がる形なので、完全に一個人へ凝縮した5点型ではない。

5 敵の悪:4/5

パッカードはかなり悪質だ。嫉妬、暴力、支配、殺人と、処断対象としての説得力は十分にある。ただし作品全体で見ると、取り巻きまで含めて全員が特級外道かというと、そこまでは行かない。よって4が妥当である。

6 後味:4/5

復讐は完遂され、理不尽は清算される。最後、二人はバイクで街を去り、どこか別の場所で新しい生活を始められそうな、希望の持てるエンディングを見せる。ビリーもまた黒い車を与えられ、嬉しそうな表情を見せる。全体としては希望寄りの余韻を残すが、そもそもジェイクという存在自体が超自然的な何かであり、完全な平穏へ戻ったとまでは言い切れない。したがって4が妥当である。

7 配役:4/5

本作の配役は強い。チャーリー・シーンの若さと、黒ヘルメットの復讐者という静止画の説得力もあるが、特に大きいのはシェリリン・フェンである。彼女の魅力が、ケリーという存在を単なる記号ではなく、「奪われた価値のあるもの」として成立させている。その結果、復讐の燃料が感覚的にも強化されている。5点級の伝説的配役までは行かないが、かなり高水準の4である。

8 演技:3/5

演技は標準点である。本作は感情の機微を芝居で細かく積み上げるというより、ムード、マシン、音、登場の仕方で観客を持っていく映画である。必要十分には機能しているが、演技それ自体が作品の核というほどではない。

9 演出:5/5

ここは満点でよい。黒い車の出現、挑発、レース処刑、警察包囲の突破、墓場での演出、そして二人がバイクで街を出るエンディングまで、とにかく見せ方が強い。脚本の精密さよりも、「復讐が実行される瞬間の気持ちよさ」で押し切る映画としては非常に優秀であり、満点を置ける。

10 伏線回収:2/5

ここは高くできない。ジェイクの正体が終盤で明かされる構造はあるが、序盤の配置が終盤で完璧な必然として回収されるタイプの快感は薄い。本作のカタルシスは伏線回収ではなく、出現、追跡、処刑の反復にある。したがって2が妥当である。

11 倫理の納得感:3/5

本作の最大の弱点はここである。パッカード本人への復讐には強く同調できる。しかし映画は、「パッカードを倒す過程で取り巻きが死ぬ」のではなく、「取り巻きを順番に処刑して、最後にパッカード」という構造になっている。しかも取り巻きは、胸くその悪い連中ではあるが、パッカード本人ほどの巨悪ではない。そのため、快感はあるが、処罰の配分には引っかかりが残る。満点どころか4でも甘く、3が妥当である。

12 敵の歯ごたえ:2/5

パッカード一味は嫌な敵ではあるが、強敵ではない。超常的復讐者に対抗する知性、戦術、統率、執念が不足しており、「強い敵を突破した快感」より「順番に狩られていく快感」に近い。障害強度としては低めであり、2でよい。

最終鑑定点:172/300(基礎点合計×執行精度)

格付け:C級(佳作)

『処刑ライダー』は、かなり独特の作品である。
復讐の論理そのものは雑で、取り巻きの扱いには明確に引っかかりがある。真の元凶パッカードへ一直線に絞ったほうが、リベンジ映画としての純度はもっと高くなったはずである。また、相手に突っ込ませるという制裁方法も、別の形であればさらに点数を伸ばしたかもしれない。

しかし、本作は別の方向で強い。黒い車、黒いヘルメット、逃れられない処刑者という造形があまりにも印象的で、復讐執行の快感は非常に強い。さらにシェリリン・フェンの魅力が、作品に危うい官能と喪失感を与えており、単なる珍作で終わらせない力を持っている。

172点、C級。佳作。

『処刑ライダー』は、復讐の設計で唸らせる映画ではない。
だが、執行の美学とビジュアルの強さで観客を持っていくカルト系リベンジ映画としては、十分に記憶に値する一本である。

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