作品情報
| 邦題 | ライリー・ノース 復讐の女神 |
| 原題 | Peppermint |
| 公開年 | 2018 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | ピエール・モレル |
| 主演 | ジェニファー・ガーナー |
概要
夫と娘をマフィアに殺され、ライリー自身も重傷を負う。裁判では犯人側の弁護士が彼女の証言を潰し、裁判官は買収され、司法はまともに機能しない。家族惨殺、子どもの死、腐敗司法、腐敗警察、麻薬組織が一気に重なる。リベンジ映画の概念としての燃料は濃い。
ただし、怒りは一点集中しにくい。実行犯、弁護士、裁判官、腐敗警官、ディエゴ一味へと標的が広がるため、「こいつだけは絶対に許せない」という一点突破の燃え方にはなりにくい。ここが本作の弱点だ。
執行力はわかりやすい。精神科施設への移送中に逃亡し、5年後に戻ったライリーは関係者を次々に処理し、最後はディエゴ本人を自分の手で撃ち殺す。自分の意思で追い込み、自分の手で報いを返す。執行型としては明快だ。
ただし映画そのものは大味である。ライリーの変身も敵の処理も勢いで押す。悪役の配置はわかりやすいが、個々の悪行を執拗に積み上げて見せ場で爆発させる型ではない。燃料の強さに対して、執行カタルシスの純度は少し下がる。
怒りは強く、黒幕も自分の手で討つ。それでも執行カタルシスが満点級まで伸びないのは、標的が散りやすく、決まり方も大味だからだ。強い映画だが、緻密な快感設計で押すタイプではない。
鑑定報告(Ver 1.3基準)
※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領 Ver1.3(概要)」をご覧ください。
| 1 不条理(被害者の無実性) | 4/5 |
| 2 喪失(奪われたものの重さ) | 5/5 |
| 3 被侮蔑(加害者からの見下し) | 4/5 |
| 4 標的(復讐対象の明確さ) | 3/5 |
| 5 敵の悪(情状酌量の余地) | 5/5 |
| 6 後味(結末のカタルシス) | 3/5 |
| 7 配役(復讐者の説得力) | 4/5 |
| 8 演技(感情の爆発度) | 3/5 |
| 9 演出(執行のスタイリッシュさ) | 3/5 |
| 10 伏線回収(因果応報の納得感) | 2/5 |
| 11 倫理の納得感(観客の同調率) | 4/5 |
| 12 敵の歯ごたえ(難易度と落差) | 3/5 |
| 基礎点合計(1〜12) | 43/60 |
基礎点の根拠
1 不条理:4/5
ライリーと娘カーリーには落ち度がない。ただし発端には、夫クリスが危険な強盗話に接触した事情があるため5ではないが、不条理の燃料は高い。
2 喪失:5/5
夫と娘を同時に失う。完全に家庭崩壊である。
3 被侮蔑:4/5
敵はライリー一家を見せしめのために潰せる存在としか見ていない。司法側も保身優先で彼女を都合よく切り捨てる。ただし侮蔑が映画の中心ではないため、5までは置かない。
4 標的:3/5
怒りの向きは明確だが、実行犯、弁護士、裁判官、腐敗警官、ディエゴ一味へと広がる。一個人への凝縮ではなく、標準点が妥当だ。
5 敵の悪:5/5
家族惨殺、子どもの殺害、証言潰し、司法買収、警察腐敗、麻薬組織の暴力まで揃う。加害行為の悪質さは満点水準にある。
6 後味:3/5
復讐は達成されるが、失われた家族は戻らない。ライリーも病院を抜け出すが行方は分からない。救済と虚無が半々に残る。
7 配役:4/5
ジェニファー・ガーナーは復讐者として十分に成立している。ただし立っているだけで空気を変える伝説級の顔までは行かない。
8 演技:3/5
必要な感情線は伝わるが、芝居で映画全体を押し上げるところまでは届かない。標準点が妥当だ。
9 演出:3/5
勢いはあるが大味でもある。見せ場は機能しているが、鳥肌が立つほど緻密に積み上げた設計ではない。
10 伏線回収:2/5
5年間の準備や腐敗した制度の構図は終盤まで効いている。ただし因果応報の快感というより、処刑モードを反復する一直線の運びであり、設計の気持ちよさは中程度未満だ。
11 倫理の納得感:4/5
相手が外道なので観客はかなり肩入れしやすい。ただしライリー自身も銀行強盗や窃盗で準備を整えており、一切の引っかかりなく同調できる5点満点までは置きにくい。
12 敵の歯ごたえ:3/5
組織、司法、警察と敵の数は多い。ただし一人ひとりが強烈な難敵として立つわけではない。標準点が妥当だ。
13 執行精度(倍率): ×4
関係者を自分の意思と手で追い詰め、最後はディエゴ本人も自ら撃ち殺す。5倍の絶対的執行までは行かないが、確実な制裁として4倍は置いてよい。
最終鑑定点:172/300(基礎点合計×執行精度)
格付け:C級(佳作)
総評
概念としての燃料はかなり強い。家族惨殺、腐敗司法、腐敗警察、麻薬組織まで揃い、ライリーは最後に自分の手で報いを返す。だがその燃料が一人の敵へ一点集中しにくく、映画の作りも大味なため、執行カタルシスの純度は少し下がる。
C級にとどまるのは、燃料が弱いからではない。燃料のわりに、決まり方が少し雑だからだ。172点、C級。強いが雑味もある、そういうタイプの佳作である。
雑記
個人的には女性が敵をぶちのめす映画は全て満点にしたいところではあるが。誕生日パーティーに誰も来なくて遊園地に行って撮ったやけに明るい家族写真が涙を誘う。


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