ビーキーパー

アメリカ
邦題ビーキーパー
原題The Beekeeper
公開年2024
製作国アメリカ
監督デヴィッド・エアー
主演ジェイソン・ステイサム

概要

わかりやすい執行カタルシス型リベンジ映画だ。善良な高齢者を食い物にする特殊詐欺グループを、ジェイソン・ステイサムが上から下まで順番に焼いていく。その一本線の気持ちよさが、この映画の価値である。

主人公アダム・クレイは、エロイーズの敷地にある納屋を借りて養蜂を営んでいる男だ。ただの養蜂家ではない。国家の外側で極秘任務を担ってきた「ビーキーパー」の元工作員である。この前提があるから、本作は悲しみに沈む復讐劇ではなく、最初から執行が約束された制裁映画として動く。

発火点も強い。エロイーズはフィッシング詐欺で全財産と慈善団体の資金を奪われ、自殺に追い込まれる。相手は偶然その場にいた小悪党ではない。善良な市民を騙して金を巻き上げることを仕事にしている集団だ。不条理と敵の悪はかなり高い。しかも連中の描き方がうまい。ただ冷たい悪党ではなく、軽薄で調子に乗っていて、相手を完全に舐めている。その軽さが胸糞を強くしている。

本作の良さは、クレイが迷わないことだ。エロイーズの死を知ったあと、悲嘆に暮れて立ち止まらず、すぐに制裁へ移る。末端を叩いて終わる気は最初からない。狙いは詐欺グループの上にある。下っ端を潰しながら責任の線をたどって頂点へ進んでいく。相手の顔は途中で変わるが、目指す方向はぶれない。一個人への凝縮ではないので満点まで届かないが、単なる拡散とも違う。

ステイサムの配役も大きい。彼が出てきた時点で、相手があとで後悔する映画だとわかる。本作はその期待を裏切らない。詐欺グループの面々が最初は余裕たっぷりにクレイを舐めていて、途中から一気に怯えていく。観客が見たいのは精密な政治サスペンスではない。善良な市民を騙していた連中が、自分たちよりはるかに危険な相手に触ったと気づいて震え上がる瞬間だ。本作はそこをちゃんと押さえている。

アクションもいい。クレイはただ強いだけでなく、ためらいがない。近接戦、銃撃、制圧、どれも迷いなく進む。相手が多くても、武装していても、権力を持っていても順に刈られていく。敵の歯ごたえで見せる映画ではなく、執行の確実さで見せる映画だ。クレイが一段ずつ上へ進み、調子に乗っていた連中を恐怖の底へ叩き込んでいく。その運びが気持ちいい。

脚本の甘さはある。後半は国家権力の中枢まで話が広がり、ご都合主義的な場面が増える。大統領の私邸パーティのくだりなど「それはさすがにないだろう」という緩さはある。ただしこの映画はそこを詰めて評価するタイプではない。伏線回収で唸らせる作品でもなく、警備体制の現実味で勝負する作品でもない。燃料を入れたあとステイサムが上まで焼き払う。その一直線の快感が主戦場である。

ヴェローナの扱いには弱さがある。母の仇を討ってくれている男を法執行官として追わなければならないという葛藤は、かなりおいしい設定だ。だが本作はそこを深く掘らない。脚本の問題である。法と私情の衝突をもっと積めば、ドラマにもう一段厚みが出たはずだ。

後味は悪くない。エロイーズは戻らないし、再生の物語でもない。だが制裁は貫徹され、爽快感がはっきり残る。クレイにとってエロイーズは単なる隣人ではなく、孤独な彼に寄り添った情緒的な居場所だった。その喪失は見かけ以上に重い。

※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領 Ver1.3(概要)」をご覧ください。

1 不条理(被害者の無実性)5/5
2 喪失(奪われたものの重さ)3/5
3 被侮蔑(加害者からの見下し)5/5
4 標的(復讐対象の明確さ)4/5
5 敵の悪(情状酌量の余地)5/5
6 後味(結末のカタルシス)4/5
7 配役(復讐者の説得力)5/5
8 演技(感情の爆発度)4/5
9 演出(執行のスタイリッシュさ)4/5
10 伏線回収(因果応報の納得感)1/5
11 倫理の納得感(観客の同調率)4/5
12 敵の歯ごたえ(難易度と落差)3/5
基礎点合計(1〜12)47/60

基礎点の根拠

1 不条理:5/5
エロイーズは善良な高齢者であり、狙われる理由がない。詐欺で人生と慈善資金を奪われ、自殺に追い込まれる発端は重い。

2 喪失:3/5
クレイ自身が家族や恋人を失う型ではない。ただしエロイーズは単なる隣人ではなく、孤独なクレイにとって唯一優しく接してくれた相手として描かれる。法的な家族ではなくても、情緒的にはかなり重い喪失だ。

3 被侮蔑:5/5
特殊詐欺グループは高齢者を食い物にしている。クレイの正体も知らず、ただの養蜂家と見ている。この見下しは強い。

4 標的:4/5
狙いは最初から詐欺グループの上にある。末端で終わらず、責任の線をたどって頂点へ向かう。一個人の顔に凝縮する型ではないため満点にはしない。

5 敵の悪:5/5
善良な高齢者から金を奪い、慈善資金まで吸い上げる集団だ。連中の軽薄さが胸糞をさらに強くしている。

6 後味:4/5
失われた命は戻らないが制裁は通る。見終わったあとに爽快感が残り、着地は悪くない。

7 配役:5/5
ステイサムの顔と存在感が、この映画の説得力そのものだ。説明不要の執行者として立っている。

8 演技:4/5
深い内面芝居で押す映画ではないが、寡黙な執行者としての説得力は高い。この男なら本当にやると思わせる強さがある。

9 演出:4/5
テンポがよく、制裁の段取りも見やすい。ただし後半はご都合主義的な場面が増えるため満点にはしない。

10 伏線回収:1/5
伏線回収で快感を作る映画ではない。燃料を入れたあと一直線に上へ焼いていく映画だ。ここはかなり低くてよい。

11 倫理の納得感:4/5
相手が外道なので観客はかなり肩入れしやすい。ただしヴェローナ側の葛藤が脚本上掘られず、法と私情の衝突にもう一段の厚みがない。満点には届かない。

12 敵の歯ごたえ:3/5
相手は大組織だが、クレイが強すぎる。設定上の規模は大きくても、実際の対決では順に刈られていく印象が強い。

最終鑑定点:235/300(基礎点合計×執行精度)

格付け:B級(良作)

現代的な特殊詐欺という強い燃料を使い、ステイサムが一直線に巣を焼いていく映画だ。伏線回収や構造の妙ではほとんど点を取らない。そのかわり不条理、喪失、敵の悪、配役、執行精度の強さで押し切る。

235点、B級。細かい脚本の精度より、怒りと制裁を直結させた力が前に出る良作だ。善良な市民を騙していた軽薄な連中が、舐めていた相手に怯え、最後にきっちり潰される。その気持ちよさが本作の価値である。

雑記

前ビーキーパーを倒しに来た現ビーキーパーはやや知能に問題ありだな。

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