作品情報
| 邦題 | 許されざる者 |
| 原題 | Unforgiven |
| 公開年 | 1992 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | クリント・イーストウッド |
| 主演 | クリント・イーストウッド、ジーン・ハックマン、モーガン・フリーマン |
概要
娼婦の顔が切られる事件で始まるが、映画の力点はそこにない。あれは導火線だ。本作が積み上げる数々の胸糞な出来事は、保安官リトル・ビルに対する怒りの燃料だ。
最初の胸糞は裁きの腐り方にある。女の顔が切られても、保安官リトル・ビルは被害者の尊厳を考慮しない。傷も怒りも店の損得に置き換え、馬で弁償させて済ませる。女の痛みや怒りを訴えても保安官は聞く耳を持たない。だから娼婦たちは自分たちで賞金を出す。子供の教育費を稼ぐ必要がある元殺し屋がその話に乗る。前半の骨格は賞金稼ぎであり、正義の執行ではない。
その骨格の上に、映画はリトル・ビルへの怒りを一段ずつ積む。イングリッシュ・ボブを見せしめに叩く。酒場でマニーに暴行する。ネッドを捕まえ、拷問し、死体を晒す。秩序維持の体で町を仕切りながら、暴力の主導権だけは手放さない。そして決定打はネッドの死だ。ここでマニーはリトル・ビルに復讐することを決意する。
本作は標的が崩れる映画ではない。入口では牧童二人の話として始まるが、怒りの矛先は終始リトル・ビルへ向かっている。そして、積み上げた火薬は確実に打ち上がる。
ただし、爆発を晴れやかな英雄譚としては見せない。マニーは自分の手で決着をつけるが、残るのは勝利の軽さではなく暴力の重さだ。自分は人殺しだ。悪党は死ぬ。そして失われたものは戻らない。そこにこの映画の苦さがある。
鑑定報告(Ver 1.3基準)
※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領 Ver1.3(概要)」をご覧ください。
| 1 不条理(被害者の無実性) | 5/5 |
| 2 喪失(奪われたものの重さ) | 4/5 |
| 3 被侮蔑(加害者からの見下し) | 4/5 |
| 4 標的(復讐対象の明確さ) | 4/5 |
| 5 敵の悪(情状酌量の余地) | 5/5 |
| 6 後味(結末のカタルシス) | 3/5 |
| 7 配役(復讐者の説得力) | 5/5 |
| 8 演技(感情の爆発度) | 5/5 |
| 9 演出(執行のスタイリッシュさ) | 4/5 |
| 10 伏線回収(因果応報の納得感) | 4/5 |
| 11 倫理の納得感(観客の同調率) | 3/5 |
| 12 敵の歯ごたえ(難易度と落差) | 4/5 |
| 基礎点合計(1〜12) | 50/60 |
基礎点の根拠
1 不条理:5/5
娼婦にもネッドにも大きな落ち度はない。加害は一方的で、町の裁きも機能しない。満点でよい。
2 喪失:4/5
デライラが奪われるのは顔と尊厳だが、それは軽いものではない。後半では牧童を殺していない友人のネッドが拷問されて殺され、さらに見せしめとして晒されたことの喪失は甚大だ。
3 被侮蔑:4/5
娼婦たちは終始、対等な人間として扱われない。傷も怒りも「商売上の損失」として片づけられる。見下しは深いが、剥き出しの悪罵より町の論理に染み込んだ冷たさとして出る。4点にとどめる。
4 標的:4/5
入口では牧童二人が標的だが、復讐の対象は保安官リトル・ビルに向かう。一人だけを狙い続ける5点型ではないが、重心はかなり明確だ。
5 敵の悪:5/5
法と秩序の顔で女の被害を切り捨て、賞金稼ぎを見せしめに叩き、ネッドを拷問して晒す。自分がこの街の法律であり、全て自分が決めるという典型的な胸糞保安官だ。満点に置ける。
6 後味:3/5
報復は成立し、リトル・ビルの支配も終わる。マニーが西で身を立てた後日談も示される。絶望では終わらない。ただしネッドは戻らず、喪失はそのまま残る。3点が妥当だ。
7 配役:5/5
イーストウッドの顔がそのまま説得力になっている。昔の伝説ではなく、血を背負って老いた男の顔だ。この役はこの顔で持っている。
8 演技:5/5
イーストウッド、ハックマン、フリーマンの三人が外さない。前半は抑え、終盤で一気に重くする。リトル・ビルの嫌らしさも十分に伝わる。
9 演出:4/5
ラストの酒場の決着はやや迫力にかける。保安官も比較的あっさり討たれる。ただし爽快感だけを押し出す作りではなく、雨が降る夜の決着は重く苦い余韻がある。
10 伏線回収:4/5
不当裁定、見せしめ、マニーへの暴行、ネッドの死が酒場の決着に一本でつながる。前半の配置は無駄になっていない。
11 倫理の納得感:3/5
リトル・ビルへの怒りは引き受けやすい。報復にも筋は通る。ただしマニーは最初から金で動いている。清潔な正義の執行ではなく、最後まで迷いなく肩入れする型でもない。
12 敵の歯ごたえ:4/5
町の実権を握り、暴力の主導権も持つ。マニーを袋叩きにし、ネッドを捕らえるだけの力もある。倒す価値のある敵だ。
13 執行精度(倍率): ×4
前半のマニーは衰え、迷い、手際の悪さを見せる。無双ではない。だがネッドの死を知ったあとの酒場では、自分の意思と手で決着をつける。執行は成立している。全編を通じて圧倒し続ける5倍型ではないため4倍にとどめる。
最終鑑定点:200/300(基礎点合計×執行精度)
格付け:C級(佳作)
総評
200点、C級。リトル・ビルへの怒りを最後まで保ち、酒場で決着までつける。不発ではない。
ただ、勝って終わっても晴れて終わらない。悪党は死ぬ。だがネッドは戻らない。保安官を殺したので子供を連れて逃げなくてはならない。復讐をきちんと描きながら、そのあとに残るものまで消してくれない。快感は渋い。だがその渋さこそがこの映画の値打ちだ。
雑記
保安官リトル・ビルの胸糞っぷりはなかなかのものです。胸糞保安官ランキングやったら結構上位に行きそう。つまり、ジーン・ハックマンの演技が素晴らしいということですね。


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