器の子

作品鑑定
邦題器の子
原題器子
公開年2025
製作国台湾
監督簡學彬
主演張孝全、李沐、婁峻碩、尹昭德

概要

『器の子』は、娘を奪われ、妻を失い、自身も冤罪で十七年服役した夫が、病院、警察、富裕層、臓器売買組織へ報いを返しに行く復讐劇である。

執行カタルシス型リベンジ映画が求める燃料は濃く見える。子どもの誘拐、妻の自殺、臓器売買、腐敗警察、冤罪と投獄とオールスターだ。だが重要な場面の説明不足やシーンのつなぎかたに不明瞭な点が多く、内容を把握して登場人物に感情移入するのが困難な映画だ。

※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領(概要)」をご覧ください。

1 不条理(過失相殺)5/5
2 喪失(損害規模)5/5
3 被侮蔑(ナメられ)4/5
4 報復対象(安定性)4/5
5 敵の悪(邪悪性)5/5
6 後味(生存希望)2/5
7 配役(適正顔)3/5
8 演技(感情伝達)3/5
9 演出(爆発の美学)1/5
10 伏線回収(因果応報の設計)2/5
11 倫理の納得感(観客同調)3/5
12 敵の歯ごたえ(障害強度)3/5
基礎点合計(1〜12)40/60

基礎点の根拠

1 不条理:5/5
張其茂は娘を奪われ、妻を失い、さらに看護師殺しの犯人にされて17年服役することになる。被害の出発点は一方的で、本人の落ち度はない。

2 喪失:5/5
失うものが大きい。娘の誘拐、妻の自死、十七年の服役が重なり、家庭も人生もまとめて壊される。

3 被侮蔑:4/5
張其茂は被害者でありながら看護師殺人事件の犯人に仕立て上げられ、拷問を受け虚偽の自白まで強いられる。

4 報復対象:4/5
報復すべき相手は娘を奪った連中で明確だ。娘を奪い、自分の人生を潰した病院、警察、臓器売買側グループだ。

5 敵の悪:5/5
乳児誘拐と臓器売買だけで最大級の外道である。そこへ冤罪の押しつけまで重なり、敵の邪悪さは強い。

6 後味:2/5
報復すべき相手にはけりをつけるが、最後に張孝全は死亡し、実の娘との未来は絶たれる。カタルシスに必要な素材はあっても、熟成不足のままエンディングに突入し、いまいち感情移入出来きないままラストシーンに突入し、しかもそのラストシーンが無駄に長いということもあり、後味は微妙だ。

7 配役:3/5
張孝全の疲れ切った父親像は役に合っている。ただ、登場人物が多く、顔と役割が頭に残りにくい。

8 演技:3/5
主人公の痛みと執念は伝わる。だが、人物関係の整理が甘いせいで芝居の効き目まで鈍る。終盤の泣かせ場も長く、演技より演出の押しつけが前に出る。

9 演出:1/5
密告の電話、情報が漏れた経緯、唐突な看護師転落、冤罪成立までの経緯等々重要場面が説明不足だ。拷問シーンばかりが印象に残る。

10 伏線回収:2/5
実の娘とドナー用の娘の二人の関係が最初から微妙に見えて意外性はない。

11 倫理の納得感:3/5
報復する理由に違和感はない。ただ、娘を誘拐した関係者を自白させるために行ったあらゆる拷問のしかたに違和感はある。

12 敵の歯ごたえ:3/5
設定上は病院、警察、富裕層、人身売買網など強敵に思えるが、実際は簡単に捕まってあっさり自白する程度である。

最終鑑定点:120/300(基礎点合計×決着成立度)

格付け:D級(不発)

『器の子』は、復讐劇として使える燃料自体は強い。娘の誘拐、妻の自殺、臓器売買ネットワーク、腐敗した警察、冤罪と投獄と概念としての燃料は完璧である。だが、その燃料は思ったほどよく燃えてくれない。燃料の熟成が出来ておらず、それぞれのキャラクターに対して憎しみや哀れみなど感情移入することが難しい。妻との生活があって、子供が生まれて、子供が誘拐されて、妻が自殺して、とりあえずそういうシーンを撮って並べて見せれば良いというものでもないのだ。

雑記

この映画の悪人どものやっていることは外道度特級にもかかわらず、なぜか憎しみがあまり湧いてこないという困った映画だ。拷問されている悪人たちになぜか同情してしまうのは、リベンジ映画的には当然マイナスである。

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