作品情報
| 邦題 | ドミニク 孤高の反逆者 |
| 原題 | Dominique |
| 公開年 | 2024 |
| 製作国 | アメリカ/コロンビア |
| 監督 | マイケル・S・オヘダ |
| 主演 | オクサナ・オルラン |
概要
途中までは「世話してくれた一家を守るために戦う映画」として進む。だがフリオ惨殺以後、本作はかなり明確な殲滅型リベンジ映画へ変質する。コロンビアの小さな町に流れ着いたドミニクは、警官フリオとその家族に迎え入れられる。麻薬カルテルと癒着した腐敗警察がフリオを惨殺し、ドミニクは封印していた戦闘能力を解放する。
第一ラウンドの自宅攻防戦ではドミニク側が悪徳警察を倒すも、祖父と娘の恋人が死ぬ。第二ラウンドの逃亡戦では、未亡人パウリナとその子ども三人まで全員死ぬ。ドミニクが守ろうとした人たちは全員死亡する。この映画は「守る」と「討つ」を両立していない。守りは完全に失敗し、残るのは報復だけだ。
喪失は極めて重い。フリオの死だけではない。首を切られ、その首が見せしめとして持ち込まれる。一家は段階的に削られ、最後には全滅する。燃料はかなり強く、敵の悪も十分に高い。誤認した容疑者を拷問して殺し、内部告発しようとしたフリオを斬首し、警察署長とカルテルが一体となって一家を潰しに来る。ここは甘く見てはいけない。
ドミニク自身は完全な無垢の被害者ではない。最初から過去から逃げている危険な女として配置されており、素朴な市民が突然覚醒する型ではない。ただ、フリオ一家の側に立って以降の行動はかなり筋が通っている。相手が腐敗警察とカルテルである以上、観客はかなり肩入れしやすい。
本作の大きな問題は最終決戦の処理だ。守るべき人々が全滅した以上、署長と麻薬カルテルの女ボスへの最終報復が映画の心臓部になるはずだった。ところが映画は最終決戦をほとんど描かない。すでに死んでいる署長と女ボス、そして屋敷を出ていくドミニクのシーンのみだ。復讐映画として最も見せるべきであろう「ラスボスをどう仕留めたか」が描かれない。
敵を倒した事実だけでは足りない。復讐映画は最後にどう決まったかが重要だ。そこを画面の外に追いやれば、怒りの回収は半端になる。途中まで積み上げた燃料が強いぶん、損失はなおさら大きい。
オクサナ・オルランの配役は悪くない。無言で危険が伝わり、寡黙な戦闘ヒロインとしての説得力はある。ただ演技で感情の深みを押し出す映画ではない。作品を持たせているのは役者の圧と身体性であって、繊細な心理描写ではない。
ラストの教会の場面は、未亡人パウリナの叔父ペペに遺品のネックレスを届ける鎮魂として見れば筋は通る。だがあれは鎮魂であって、決着の代わりにはならない。最終決戦を省略した穴を埋める力はない。敵は倒したが守るべき人々も全員死んでいる。残るのは空白と鎮魂だけだ。
鑑定報告(Ver 1.3基準)
※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領 Ver1.3(概要)」をご覧ください。
| 1 不条理(被害者の無実性) | 4/5 |
| 2 喪失(奪われたものの重さ) | 5/5 |
| 3 被侮蔑(加害者からの見下し) | 4/5 |
| 4 標的(復讐対象の明確さ) | 4/5 |
| 5 敵の悪(情状酌量の余地) | 5/5 |
| 6 後味(結末のカタルシス) | 1/5 |
| 7 配役(復讐者の説得力) | 4/5 |
| 8 演技(感情の爆発度) | 3/5 |
| 9 演出(執行のスタイリッシュさ) | 3/5 |
| 10 伏線回収(因果応報の納得感) | 1/5 |
| 11 倫理の納得感(観客の同調率) | 4/5 |
| 12 敵の歯ごたえ(難易度と落差) | 4/5 |
| 基礎点合計(1〜12) | 42/60 |
基礎点の根拠
1 不条理:4/5
ドミニク自身は普通の市民ではない。ただ、フリオ一家が腐敗警察とカルテルに巻き込まれて潰されていく理不尽さはかなり重い。
2 喪失:5/5
フリオだけでなく、未亡人パウリナと子ども三人まで全員死ぬ。守るべき人々が全滅する以上、損失はほぼ壊滅的だ。
3 被侮蔑:4/5
腐敗警察もカルテルも、女一人と弱い家族を完全に舐めている。首を見せしめとして持ち込む侮辱まで含め、燃料はかなり強い。
4 標的:4/5
途中までは家族保護の色があるが、パウリナと子供たちの死亡以降は署長とカルテル女ボスへの報復が明確になる。一点集中の単独仇討ちではないが、焦点は十分に鋭い。
5 敵の悪:5/5
誤認した容疑者を拷問して殺し、内部告発しようとした警官を斬首し、その首を見せしめに使う。腐敗警察とカルテルの結託としてはかなり悪質だ。
6 後味:1/5
守るべき人々は全員死ぬ。ラストにあるのは再生ではなく鎮魂だけだ。最終決戦の快感すらまともに回収されない。希望はほとんど残らない。
7 配役:4/5
オクサナ・オルランは寡黙な戦闘ヒロインとして十分に機能している。立っているだけで危険が伝わる。
8 演技:3/5
必要十分ではあるが、演技が作品を一段上へ押し上げるほどではない。情緒の深掘りより、圧と身体性で持たせている。
9 演出:3/5
第一、第二ラウンドは見やすい。だが最終ラウンドをほぼ省略した時点で大きく損をしている。見せるべき山を外した減点は重い。
10 伏線回収:1/5
構造の妙で快感を作る映画ではない。掘り起こした武器弾薬すら、決着の見せ場として回収されない。
11 倫理の納得感:4/5
相手が腐敗警察とカルテルである以上、観客はかなり肩入れしやすい。ただし主人公自身も暴力の世界の人間であり、全面的な聖人ではない。
12 敵の歯ごたえ:4/5
腐敗警察とカルテルの両方で数も多い。ドミニク一人で押し返すには十分に硬い相手だ。
13 執行精度(倍率): ×3
敵は最終的に倒しているので、執行そのものは成立している。2倍の「不全な執行」ではない。ただし本作は守るべき人々を救うことも含んだ戦いであり、その守護対象が全滅している以上、勝利の達成感は大きく損なわれる。しかも最終標的をどう潰したかを映画がまともに見せないため、執行の快感も弱い。報復は成立しても、圧倒的な制裁や確実な爽快感には届かない。3倍が妥当だ。
最終鑑定点:126/300(基礎点合計×執行精度)
格付け:D級(不発)
総評
燃料は強い。敵もかなり悪い。途中まではかなりよい。だが守るべき人々を全員失い、最終決戦をまともに見せない。この二つで、復讐映画としての回収はかなり壊れてしまった。
126点、D級。つまらないから低いのではない。怒りの燃料を十分に積みながら、その回収のいちばん大事な部分を自分で手放したから低い。もっと上へ行けたはずの作品だ。
雑記
U-NEXTのポイントが失効しそうなのでポイント消費のために見たが結構面白かった。残念なのは署長は最後命乞いをしたのか、それとも最後までいきがったのか、有無を言わさずヘッドショットしたのか不明だが、署長に対する執行シーンは観たかった。ヘッドショットといえば回想シーンでドミニクもまともにヘッドショットを食らっているが、後遺症は味覚がおかしくなっただけである。強すぎる。


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