スリーパーズ(1996年アメリカ)

邦題スリーパーズ
原題Sleepers
公開年1996
製作国アメリカ
監督バリー・レヴィンソン
出演ジェイソン・パトリック、ブラッド・ピット、ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン、ケヴィン・ベーコン

概要

『スリーパーズ』は、少年時代に少年院で看守たちから性的虐待と暴力を受けた4人が、大人になってから加害者の看守たちに復讐する映画である。ロレンツォ・”シェイクス”・カルカテラ(ジェイソン・パトリック)、マイケル・サリヴァン(ブラッド・ピット)、ジョン・ライリー(ロン・エルダード)、トミー・マルカーノ(ビリー・クラダップ)は、ヘルズ・キッチンで育った幼なじみである。少年時代の悪ふざけで、ホットドッグの屋台を地下鉄の階段から転がして通行人に重傷を負わせ、4人は少年院へ送られる。4人の少年達は看守ショーン・ノークス(ケヴィン・ベーコン)らから虐待を受け、更に院内で仲間になった黒人少年のリゾは看守たちに殴り殺されるという事件が起きる。

出所後に勉強して検察官になったマイケルは少年院での出来事が片時も頭から離れず、復讐する機会を伺っていた。そんなある日マフィアとなっていたジョンとトミーは、酒場で偶然ノークスと出会い、その場で射殺する。ノークス殺害事件の担当検察官となったマイケルはこの想定外の事件を利用して、少年院で受けた被害の決着をつけようとする。

本作の報復対象は看守4人全員である。ノークスはジョンとトミーに撃たれ、アディソンは少年院で撲殺されたリゾの身内に殺され、ノークス殺人事件の証人であるファーガソンはその法廷で過去を暴かれることになり、スタイラーは別件で逮捕される。

本作の倫理は単純ではない。少年時代の被害は重く、加害者たちへの復讐は理解できる。だが、成人後のジョンとトミーは裏社会の人間であり、ノークスを殺した殺人犯でもある。マイケルは検事の立場を使って裁判を操作し、神父ボビーは彼らを救うために偽証する。法と倫理の原則から見れば、大きな問題がある。しかし本作は、法廷倫理を論じる映画ではない。少年院で傷を負った4人が、自分たちが育ったヘルズ・キッチンの仲間達に助けられ、過去に決着をつける映画である。

※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領(概要)」をご覧ください。

1 不条理(過失相殺)4/5
2 喪失(損害規模)5/5
3 被侮蔑(ナメられ)5/5
4 報復対象(安定性)5/5
5 敵の悪(邪悪性)5/5
6 後味(生存希望)3/5
7 配役(適正顔)5/5
8 演技(感情伝達)5/5
9 演出(爆発の美学)5/5
10 伏線回収(因果応報の設計)4/5
11 倫理の納得感(観客同調)4/5
12 敵の歯ごたえ(障害強度)3/5
基礎点合計(1〜12)53/60

基礎点の根拠

1 不条理:4/5
4人が少年院へ送られる原因は、少年時代の悪ふざけが事故になったことにある。完全な無過失ではない。しかし、看守による性的虐待と暴力は、少年院で受けるべき処分の範囲を完全に超えている。

2 喪失:5/5
4人が失ったものは、一時的な自由ではない。少年期、尊厳、身体の安全、他人への信頼、その後の人生まで損なわれる。ジョンとトミーは裏社会へ落ち、マイケルとシェイクスも少年院時代の事件が頭から離れず苦しんでいる。

3 被侮蔑:5/5
ノークスたちは、看守という立場を使って少年たちを支配し、身体と尊厳を踏みにじる。暴力だけでなく、子どもたちの無力さを利用した支配である。

4 報復対象:5/5
報復対象は、ウィルキンソン少年院で4人を虐待した看守たちである。ノークスはジョンとトミーに射殺、この二人を無罪にすることと、残りの犯人3人をどのように始末するかがポイントだ。

5 敵の悪:5/5
ノークスたちは、保護すべき少年たちを閉鎖施設の中で虐待する。子どもへの性的加害、暴力、権力の濫用が重なっている。特にノークスとアディソンの悪は強く、情状酌量の余地はない。

6 後味:3/5
裁判はジョンとトミーを救い、4人は少年時代の事件に一応の決着をつける。だが、失われた時間も尊厳も戻らない。マフィアのジョンとトミーはその後長く生きることは叶わなかった。復讐は成立するがその代償も大きい。

7 配役:5/5
ノークス役のケヴィン・ベーコンは、少年たちを支配する看守としての嫌悪感、つまり胸クソの悪さは特筆すべきものがある。この映画の怒りの燃料の積み上げはほとんど彼ひとりによるものと言ってよい。

8 演技:5/5
少年時代の俳優陣で特にロレンツォ役のジョー・ペリーノとジョン役のジェフリー・ウィグダーは少年院送致前後の精神的なギャップをよく演じている。ロバート・デ・ニーロがひとり教会で偽証すべきかどうか葛藤している場面もこの映画のひとつの山場である。

9 演出:5/5
4人の少年時代を丁寧に描くことにより、少年院での虐待とその後の展開がより感情移入しやすいものとなる。特に、神父やキングベニーなどヘルズキッチンの大人達との関わりが本作の柱となる。

10 伏線回収:4/5
象徴的なのは少年院でのアメフトの試合のあと、4人とリゾは独房に送られ、そこでリゾは看守たちに殴り殺される事件だ。この件がリゾの兄リトル・シーザーによる元看守アディソン制裁につながり、単なる過去の悲劇で終わせない。

11 倫理の納得感:4/5
少年時代の被害が重く、加害者たちへの復讐には強い説得力がある。ただし、成人後のジョンとトミーは殺人者であり、マイケルは検事の立場で裁判を操作し、神父ボビーは偽証する。原則から見れば危うい。しかし映画内では、かつて守られなかった少年たちを、ヘルズ・キッチンの大人達が総出で守る話として成立している。

12 敵の歯ごたえ:3/5
看守たちは、4人が少年院に居た時期には絶対的な支配者である。しかしノークスは偶然の再会で撃たれ、他の元看守たちも法廷や別ルートで報復される。敵の悪は強いが、復讐後半の障害として高い知力や戦闘力を見せるわけではない。

最終鑑定点:238.5/300(基礎点合計×決着成立度)

格付け:B級(良作)

本作の加害者に対する怒りの燃料は非常に強い。少年たちは看守たちから過酷な性的虐待と暴力を受け、心に深い傷を受けた。これは単なる暴行で済まされる話ではなく、彼らのその後の人生に大きな影を落とすことになる。一方で、その強い燃料の勢いで、倫理的な危うさを観客に許容させているという見方も出来る。被害者である一方で殺人者でもあるジョンとトミー、検事の立場を復讐に使うマイケル、殺人者を救うために偽証する神父ボビー。確かに法と倫理的には問題だろう。

ただし、本作は裁判における倫理問題を描きたい作品ではない。苛烈な性被害を受け心に傷を負った少年達が成長して加害者達に復讐する物語だ。特に、神父ボビーは少年達にとって父親とも言える存在であり、少年院で何が起きたかを察しながら、ただ励ますことしか出来なかったことに心を痛めており、法廷での偽証は倫理的に問題があるにせよ、かつて救えなかった子どもたちを今度こそ救う決断をした。終盤ファット・マンチョがシェイクスとキャロルにこう言うシーンがある。『街には街の掟があり、法廷は金持ちで弁護士を雇える奴らのものだ、法廷の正義は金で買えるが、街の正義はそうはいかん、街の正義の女神は見逃さない、ちゃんと見ている』と。ヘルズ・キッチンにはヘルズ・キッチンの掟があるのだ。

雑記

タイトルの『Sleepers』は【長期で少年施設に送られた少年たち】を指す俗語だそうで、映画的には【復讐心を長く眠らせていた男たち】ということも言えそうだ。あと、この映画は『本当にノンフィクションなのか問題』がついてまわった。作者と出版社はベースは真実だと主張するが、大メディアも参戦して真実性を疑い、ニューヨーク市の司法や行政も否定しており、結果的に真偽を証明も反証もできていないようだが、世間の見方は概ね黒に近いグレーという感じだ。実話だと言われれば観客の被害者に対する同情と犯人に対する怒りはより強くなり、この映画の倫理的な問題が薄まってしまう。それは良くないのではないかと。実際この映画がどうなのかはさておき、『本作は実話です』なんてハッタリかました結果、訴訟問題に発展したなんてことは珍しくもないことなので何れにしても慎重にやったほうがいいということでしょうね。

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