作品情報
| 邦題 | キャッシュトラック |
| 原題 | Wrath of Man |
| 公開年 | 2021 |
| 製作国 | アメリカ・イギリス |
| 監督 | ガイ・リッチー |
| 主演 | ジェイソン・ステイサム |
概要
主人公のHは裏社会のボスであり、自身の息子ダギーを殺した犯人を追っている。Hが現金輸送車襲撃の下見をしている最中に、別の強盗団がフォーティコの輸送車を襲った。襲撃犯達は警備員を殺し、その襲撃現場を目撃してしまったダギーを射殺。Hも撃たれたが一命を取り留めた。退院後、HはFBIのキングから渡されたリストをもとに、自分の組織を使って息子を殺した犯人を捜すが見つからない。そこでHはフォーティコ内部に内通者がいると見て、正体を隠してフォーティコに社員として入り、内通者を探して犯人に迫る。
鑑定報告(Ver 1.4基準)
※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領(概要)」をご覧ください。
| 1 不条理(過失相殺) | 2/5 |
| 2 喪失(損害規模) | 3/5 |
| 3 被侮蔑(ナメられ) | 4/5 |
| 4 報復対象(安定性) | 4/5 |
| 5 敵の悪(邪悪性) | 5/5 |
| 6 後味(生存希望) | 3/5 |
| 7 配役(適正顔) | 5/5 |
| 8 演技(感情伝達) | 3/5 |
| 9 演出(爆発の美学) | 4/5 |
| 10 伏線回収(因果応報の設計) | 4/5 |
| 11 倫理の納得感(観客同調) | 2/5 |
| 12 敵の歯ごたえ(障害強度) | 3/5 |
| 基礎点合計(1〜12) | 42/60 |
基礎点の根拠
1 不条理:2/5
現金輸送車襲撃を目撃しただけで撃たれたHの息子であるダギー本人に落ち度はない。何も知らない子どもへの加害は理不尽である。ただしH自身はFBIに追われる犯罪者であることと、H達の計画する現金輸送車襲撃前の下見を行っている最中の出来事であるため、全く不条理な出来事とは言えない。
2 喪失:3/5
Hの息子を奪われた喪失は重い。だが、失われたのは息子ひとりであり、全家族の喪失という規模でも無いため標準的な喪失とする。
3 被侮蔑:4/5
本作で最も侮蔑的なのは、内通者のブレットがHを「脅せば従う相手」と見ている点である。Hはすでに単独で6人の襲撃犯をひとりで制圧した実績があり、実力を過小評価しすぎである。
4 報復対象:4/5
報復の中心は、ダギーを撃ったジャンと、襲撃に関わった退役軍人グループである。Hは外部の容疑者を洗い、届かないと見てフォーティコ内部の内通者を探る。目的は一貫して、ダギーを殺した犯人へ辿り着くことにある。ただし中盤、FBIのリストをもとに本命でない者まで力ずくで洗う。中心は明確だが、報復の範囲は一時的に広がる。一本線ではない。
5 敵の悪:5/5
襲撃犯は現金輸送車強盗、警備員殺害、目撃者殺害、本丸のジャンに至っては同僚を殺害して金を独り占めするなど、特にジャンの卑劣さ悪質さは最大級だ。
6 後味:3/5
Hはジャンを殺して息子の仇を討つ。ただしH自身も裏社会の組織を率いる男であり、犯人捜しの過程で無関係な者たちに凄惨な暴力をふるって情報を吐かせようとするなど過剰なまでの残酷さも見せる。復讐は果たされるが、正義の回復として終わる映画ではない。
7 配役:5/5
ジェイソン・ステイサムが新人警備員として現れた時点で、観客は良くも悪くもその後の展開の予想が付く。マフィアとつながる悪徳FBI捜査官キングを演じるアンディ・ガルシアは登場シーンは少ないながらも印象的だ。本作はジェイソン・ステイサムに対する観客のイメージありきの映画だ。
8 演技:3/5
ジェイソン・ステイサムの期待を裏切らない演技は安心感はあるが、ワンパターンでもある。
9 演出:4/5
前半は「この新人は何者か」で引っ張り、後半で息子殺しと裏社会の背景を開くなど、時系列を前後させ、Hの正体と復讐の理由を小出しにする工夫がある。終盤少人数の強盗団と武装した警備員達との壮絶な攻防戦は迫力がある。
10 伏線回収:4/5
低い試験結果、初回襲撃での異常な戦闘力、FBIキングとの関係、デイナ宅の大金、ブレットの内通、金袋のスマホ、検死報告書。これらが終盤へ収束する。とくに検死報告書は、ジャンの処刑方法へ直結する。映画的な都合の良さもあるが、復讐の決着へ向けた回収は明確である。
11 倫理の納得感:2/5
Hが息子を撃ったジャンやその一味に復讐することに違和感はない。だが、Hを正義の復讐者ではない。Hは裏社会の組織を率いる男であり、FBIのリストをもとに、ダギー殺しと無関係かもしれない者まで力ずくで潰している。
12 敵の歯ごたえ:3/5
強盗団は退役軍人グループであり装備もスキルも一流だ。しかもフォーティコ内部にはブレットという内通者もおり計画的だ。ただし、Hに対する認識が甘い。Hはすでに単独で強盗団6人を無双しており、内通者のブレットはHの実力を目撃している。にもかかわらずブレットは、Hは脅せば屈すると判断し、襲撃犯リーダーのジャクソンが警戒している様子も無い。更に欲を出して武装した警備会社の車庫まで狙ったため、武装した警備員たちと激しい戦いを繰り広げることになり、犠牲も多数出す。最後の襲撃といえどもジャクソンの判断には疑問がある。
13 決着成立度(倍率): ×5
Hはジャンを自分の手で処刑しており、第三者の関与も無い。しかも、ダギーが撃たれた肝臓、肺、脾臓、心臓を、検死報告書の通りに銃弾を撃ち込むという、目には目をスタイルでの理想的な形の決着である。
最終鑑定点:210/300(基礎点合計×決着成立度)
格付け:C級(佳作)
総評
ガイ・リッチーが『ブルー・レクイエム』をどうリメイクしたか。ブルーレクイエムの主人公アレックスは、息子を殺した犯人が再び現れる場所に、ただ居続けるしかない普通の中年だった。リッチーはこの主人公のキャラクターを真逆にした。Hは裏社会の組織を率いる男であり、自らの組織を使って犯人捜しを行い、見つからないので警備会社に潜入し、最後は犯人を自分の手で処刑する。受け身でいるしかない喪失の物語を、能動的な執行の物語に変化させた。素材自体の自然なうま味を生かした料理に化学調味料を入れて万人向けの味付けに変えた。ただ、化学調味料が悪いということではない。
雑記
リメイク作品も良し悪しあるが、この映画は改悪でもなく改善でも無く、違うベクトルの映画として面白い映画だと思う。が、Hが現金輸送車の偵察に行かざるを得なくなったくだりとか、襲撃計画は念には念を入れるはずの敵のリーダージャクソンはどこまでHに関する情報を知っていたのかとか、襲撃した現金輸送車の警備員がまさかのHだったとか、まあいろいろあるがあばたもえくぼだ。執行カタルシス型リベンジ映画的に物足りないのは、やはり息子とジェイソン・ステイサムとの関係描写が足りないことだ。息子を殺された無念感こそが復讐の動機の全てなので、無念感が弱いとどうしても最後の復讐シーンも連動して弱まってしまう。肝臓とか肺とか撃って息子の仇討ちは工夫しましたねで終わりじゃもったいない。マフィアのボスの息子らしからぬ良い子キャラにして、ジェイソン・ステイサムと地球温暖化の噛み合わない会話を少しさせただけではだめなのだ。まあ、リベンジ映画あるあるだが。


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