作品情報
| 邦題 | パニッシャー |
| 原題 | The Punisher |
| 公開年 | 2004 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | ジョナサン・ヘンズリー |
| 主演 | トーマス・ジェーン、ジョン・トラボルタ |
概要
正統派の家族皆殺し報復型リベンジ映画だ。潜入捜査の末に引退を控えていたフランク・キャッスルは、マフィアのボス、ハワード・セイントの息子を死なせた報復として、プエルトリコで一族が集まっているところを襲撃される。妻子だけでなく親族までほぼ全滅し、フランク自身も撃たれ、焼かれ、死んだものとして扱われることになる。不条理も喪失も満点でよい。
見落とせないのは、フランクがもともと司法側の人間だということだ。彼は潜入捜査をしていたFBI捜査官であり、本来なら法に委ねる側にいた。ところが一族皆殺しにされてから五か月が経っても誰一人逮捕されていない。警察もFBIも、セイントの権力の前で機能していない。この前提があるから、フランクの私刑は単なる逆上ではなく、司法不全を見切った末の移行として見える。ここが本作の大きなポイントだ。
強みは、フランクがボスをすぐ撃ちに行かないことだ。まず家庭と組織を内側から壊す。妻と親友の不義密通を偽装し、セイントに自分の手で妻と右腕を殺させる。ただの射殺型の私刑ではなく、相手に自分の世界が壊れていくのを味わわせる復讐になっている。
決まり手も強い。最後はただの銃殺ではない。セイントを車で引きずり、可燃物を仕込んだ駐車場へ送り込み、爆発で始末する。しかも燃える炎はどくろの図像になる。大味ではあるが記憶には残る。引きずり焼殺から爆殺へつなぐ見せしめとしてはかなり派手で、決着の印象も強い。
敵の悪も高い。セイントは逆上した父親にとどまらない。連邦側の情報まで買ってフランクの経歴を洗い、家族ごと処理する。ロシアンやハリー・ヘックのような刺客も送り込み、逃げ場を潰しに来る。十分に外道だ。
意外に効いているのは、同じアパートの住人たちの存在だ。最初のフランクは周囲を拒絶していて距離がある。だが少しずつ関係がほどけ、途中からは協力まで得る。家族を失って空洞になった男が、他人とのつながりを完全には捨てていないことが見える。復讐劇の暗さを和らげ、後味にも人間味を残している。
トーマス・ジェーンの配役は悪くない。怒鳴り散らすより沈んだ怒りを抱えた男として立っており、家族を失った後の空っぽな感じも出る。壊れたまま報復だけで動いている感じがこの映画には合っている。ジョン・トラボルタも、大物感より俗物感と病的な嫉妬心が前に出るが、それがむしろ崩される側として効いている。
演出は設定ほど胸糞を煮詰め切れていない。家族皆殺しという燃料自体は最高級だが、観客の怒りや嫌悪をじわじわ最大化していく徹底さは一段足りない。見せ場はあるが、燃料の強さをカタルシスへ変換する押しが弱い。ここは惜しい。
執行精度も満点までは上げにくい。フランクは最後まで自分の意思で動きセイントを始末するが、壊滅の引き金を引いているのはセイント自身でもある。セイントの病的な嫉妬心を利用し、家庭と組織を内側から自壊させる構造が大きい。確実な制裁ではあるが、絶対的執行とは少し違う。
最後は自殺を考えるも亡き妻の幻影で踏みとどまり、パニッシャーとして生きていく覚悟を決める。再生ではないが、生の方向は定まっている。
鑑定報告(Ver 1.3基準)
※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領 Ver1.3(概要)」をご覧ください。
| 1 不条理(被害者の無実性) | 5/5 |
| 2 喪失(奪われたものの重さ) | 5/5 |
| 3 被侮蔑(加害者からの見下し) | 5/5 |
| 4 標的(復讐対象の明確さ) | 4/5 |
| 5 敵の悪(情状酌量の余地) | 5/5 |
| 6 後味(結末のカタルシス) | 4/5 |
| 7 配役(復讐者の説得力) | 4/5 |
| 8 演技(感情の爆発度) | 4/5 |
| 9 演出(執行のスタイリッシュさ) | 3/5 |
| 10 伏線回収(因果応報の納得感) | 4/5 |
| 11 倫理の納得感(観客の同調率) | 4/5 |
| 12 敵の歯ごたえ(難易度と落差) | 4/5 |
| 基礎点合計(1〜12) | 51/60 |
基礎点の根拠
1 不条理:5/5
フランクは潜入捜査官であり悪党ではない。報復は本人だけでなく、妻子と親族の集まり全体へ向かう。理不尽さは満点でよい。
2 喪失:5/5
家族再会の場で妻子他親戚一同皆殺しにされる。最大級の喪失だ。
3 被侮蔑:5/5
セイント側はフランクを死んだものとして処理し、自分たちの優位をまったく疑わない。その見誤りが快感に直結している。
4 標的:4/5
中心はセイントだが、その妻、親友、息子、組織全体を崩していく構造だ。一点集中の単独仇討ちより、家族と組織の崩壊報復に近い。
5 敵の悪:5/5
家族皆殺しの報復、情報買収、刺客投入まで含めて十分に外道だ。
6 後味:4/5
家族は戻らないが、フランクは虚無に沈むだけでは終わらずパニッシャーとして生きていく覚悟を決める。暗いが、生きる希望は見出した。
7 配役:4/5
トーマス・ジェーンは壊れた静けさをまとったフランク像として機能している。住人たちの脇の配役もよく、最初は疎遠だった関係が協力へ変わる流れが作品に人間味を加えている。
8 演技:4/5
トーマス・ジェーンやジョン・トラボルタはさるものながら、アパートの住人達の純粋さが光っている。
9 演出:3/5
家族皆殺しという最高級の燃料を観客の怒りとして最大化する演出には届いていない。憎しみの煮詰め方がやや甘い。
10 伏線回収:4/5
セイントに自分の親友と妻を殺させる流れは因果応報としてよく効いている。最終爆殺の図像化まで含めて決着の設計は悪くない。
11 倫理の納得感:4/5
家族皆殺しへの報復なので観客はかなり乗りやすい。しかもフランクはもともとFBI捜査官であり、法に委ねる側の人間だった。その彼が五か月経っても誰も逮捕されない現実を見て私刑へ移る流れには強い説得力があるが、全面的に爽快な正義とも言い切れない。
12 敵の歯ごたえ:4/5
セイントは組織と金を持ち、ロシアンやヘックのような危険な駒もいる。一方的に蹂躙する映画ではない。
13 執行精度(倍率): ×4
フランクは最後まで自分の意思で動きセイントを始末する。ただし壊滅の引き金はセイント自身が引いている部分も大きい。セイントの病的な嫉妬心を利用し、家庭と組織を内側から自壊させる構造が核にある。確実な制裁として4倍が妥当だ。
最終鑑定点:204/300(基礎点合計×執行精度)
格付け:C級(佳作)
総評
家族皆殺しの極めて強い燃料、敵の外道ぶり、陰湿な心理工作、最後の見せしめ爆殺までそろった強いリベンジ映画だ。ただし設定ほど胸糞と怒りを煮詰め切れない演出と、自滅誘導を含む決着が超高得点までは押し上げない。佳作としては十分に強いが、良作までは届かない。
204点、C級。そのあたりに着地する作品だ。
雑記
この映画は燃料はいいのに、執行カタルシス型リベンジ映画としていまいち燃えないのはジョン・トラボルタのせいだと思う。


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