作品情報
| 邦題 | バトルガンM-16 |
| 原題 | Death Wish 4: The Crackdown |
| 公開年 | 1987 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | J・リー・トンプソン |
| 主演 | チャールズ・ブロンソン |
概要
映画『バトルガンM-16』は、J・リー・トンプソン監督、チャールズ・ブロンソン主演による1987年のアメリカ映画である。デス・ウィッシュ・シリーズ第4作で、恋人の娘を麻薬で失ったポール・カージーが、ロサンゼルスの麻薬組織と対決する。
恋人カレンの娘エリカが、売人から渡されたコカインのオーバードーズで死ぬ。ポール・カージーはその売人を始末する。発端としては十分な燃料だ。だがこの映画は、そこから復讐映画として別の方向へ走り始める。
ネイサン・ホワイトと名乗る新聞王がポールに接触し、ロサンゼルスの麻薬組織を潰せと依頼してくる。ポールは武器と情報を受け取り、ザカリアスとロメロという二つの組織を煽り合わせて共倒れさせる。終盤、ホワイトの正体は実はフェラーリという第三の麻薬組織のボスで、競合組織を排除するためにポールを道具として使っていたことが判明する。最後はカレンも殺され、ポールはフェラーリをグレネードランチャーで仕留め、刑事の呼び止めにも応じず、一人去って行く。
この構造が、復讐映画として致命的な問題を生む。ジョジョへの報復で発端の決着は事実上ついている。その後ポールがやっていることは、理屈の上では麻薬撲滅でも、実態は他人の抗争の代理処理だ。終盤でフェラーリを仕留めても、それはエリカへの仇討ちではなく、だまされた怒りの清算に近い。燃料と決着が、最後まで一本の線でつながらない。
もう一つの弱点は人物描写の薄さだ。ポールとエリカの関係も、カレンとの時間も、映画はほとんど積まない。だから彼女や、娘同然のエリカを喪失した重さが伝わってこない。カレンが撃たれて倒れていても、ポールはそばに駆け寄ることもせずその場を去る。見終わると、この男が何のために戦っていたのかが曖昧になる。
鑑定報告(Ver 1.4基準)
※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領(概要)」をご覧ください。
| 1 不条理(過失相殺) | 3/5 |
| 2 喪失(損害規模) | 3/5 |
| 3 被侮蔑(ナメられ) | 4/5 |
| 4 報復対象(安定性) | 2/5 |
| 5 敵の悪(邪悪性) | 5/5 |
| 6 後味(生存希望) | 2/5 |
| 7 配役(適正顔) | 5/5 |
| 8 演技(感情伝達) | 2/5 |
| 9 演出(爆発の美学) | 3/5 |
| 10 伏線回収(因果応報の設計) | 3/5 |
| 11 倫理の納得感(観客同調) | 2/5 |
| 12 敵の歯ごたえ(障害強度) | 3/5 |
| 基礎点合計(1〜12) | 37/60 |
基礎点の根拠
1 不条理:3/5
エリカの死は重い。ただし麻薬に手を出す選択は本人にある。完全な巻き込まれ型ではないため、3点に留まる。
2 喪失:3/5
エリカとカレンの二人を失う。ただし映画がその関係を積まないため、喪失の重さが燃料として機能しない。
3 被侮蔑:4/5
売人は若者を金づるとして扱い、ホワイトを名乗る男はポールの怒りまで利用する。人間を使い捨てにする構造が重なる。
4 報復対象:2/5
ジョジョから始まり、二つの麻薬組織を経て、フェラーリに着地する。相手が三段階で変わり、エリカの死と最終的な決着が直線で結ばれない。復讐映画として焦点が定まらない。
5 敵の悪:5/5
若者に薬を流し、証人を刺し、競合組織を排除するために他人を操り、最後はカレンまで撃つ。加害は具体的かつ組織的で、情状酌量の余地がない。
6 後味:2/5
敵は倒れる。しかしエリカもカレンも戻らず、ポールはカレンのそばに留まらずに去る。勝利の形だけがあって、救いの手触りがない。
7 配役:5/5
人物関係の薄さをブロンソンの顔が補っている。歩き、狙い、撃つ。それだけで話が通る俳優はそうはいない。
8 演技:2/5
感情を見せる場面が脚本上ほとんど用意されていない。ブロンソンの無表情は、この映画では悲しみの薄さと区別がつかなくなっている。
9 演出:3/5
二組織を煽り合わせる流れと終盤の爆破には勢いがある。ただしエリカの死もカレンの死も、悲劇として深める前に次の段取りへ進む。感情の運びが粗い。
10 伏線回収:3/5
ホワイトの正体反転は前半の伏線が終盤に返る設計で、シリーズ中もっとも脚本らしい仕掛けだ。ただしその回収がエリカの死と結びつかないため、復讐映画としてのカタルシスにならない。
11 倫理の納得感:2/5
麻薬組織を潰す行動自体はわかりやすい。ただしポールは知らぬうちに他人の抗争に使われており、「エリカの仇を討つ」という筋が最後まで通り切らない。迷いなく肩入れしにくい構造だ。
12 敵の歯ごたえ:3/5
末端の売人ではなく、二つの組織とその背後のフェラーリが相手だ。規模はある。ただしポールが苦しみ抜いて突破する場面は少なく、歯ごたえとしては標準の範囲に収まる。
13 決着成立度(倍率): ×3
フェラーリをポール自身が仕留める。決着は成立する。ただしその終点はエリカへの報復ではなく、利用されたことへの怒りの清算だ。燃料と決着がつながっていない分カタルシスは少ない。
最終鑑定点:111/300(基礎点合計×決着成立度)
格付け:D級(不発)
総評
『バトルガンM-16』は、エリカの死で始まり、麻薬組織の掃討で終わる。その間に報復の相手が三段階で変わり、最後の決着はエリカへの仇討ちではなく、自分を操った男への清算になっている。燃料と決着が一本につながらないまま話が終わる。
脚本のホワイト反転はシリーズ中もっともひねりのある設計だ。ただしその仕掛けが復讐映画の骨格を壊している。
雑記
エリカの死を起点にポール・カージーが麻薬組織を潰す筋は一応ある。せめて最後にカレンのそばで「エリカの仇は取った」とかそういうシーンがあればまだギリギリポール・カージーの殺しの動機に筋が通った。そこをやらないので、ポール・カージーは愛する彼女とその娘のために復讐しているのではなく、ただ単に敵を処理する機械に見えやすくなっている。ターミネーター2のアーノルド・シュワルツェネッガーのほうがまだ人間味がある。


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