作品情報
| 邦題 | ウィンチェスター銃’73 |
| 原題 | Winchester ’73 |
| 公開年 | 1950 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | アンソニー・マン |
| 主演 | ジェームズ・スチュワート、シェリー・ウィンタース、スティーヴン・マクナリー |
概要
軸はシンプルだ。主人公リン・マカダムが、父を殺した兄ダッチ・ヘンリーを追い詰めて討ち取る話である。射撃大会で優勝して手に入れた名銃ウィンチェスターが兄に奪われ、各地を渡っていくため、見た目には寄り道の多い映画に見える。だが本筋はぶれない。リンの怒りの中心は最初から最後までダッチ一人だ。
燃料は十分に強い。父を殺した相手が実の兄という時点で、不条理と家族崩壊が重なっている。しかもリンは、父の仇を追うだけでなく、射撃大会で勝ち取った銃まで奪われる。父殺しの仇と奪われた銃が一本の線に重なるため、追跡の動機は太い。
本作の特徴は、復讐劇に「名銃の遍歴」を組み合わせている点にある。ウィンチェスターが別の人物の手に渡るたびに、西部劇としての見せ場が増える。それが本作の面白さだ。ただし執行カタルシス型として見ると、その構造は少し損でもある。怒りを一人の顔へ煮詰め続けるより、銃をめぐるエピソードが前に出る時間があるからだ。復讐劇としての芯は明快だが、感情の圧縮はやや緩む。
それでも標的の明確さは高い。終盤でダッチが実はリンの兄であり、父を殺した張本人だと明かされることで、復讐の線はさらに濃くなる。追っていた悪党が、ただの無法者ではなく家族そのものを壊した相手だったと判明するからだ。
リンは寡黙で、目的のはっきりした追跡者だ。終盤、酒場でウェイコを締め上げてダッチの居場所を吐かせる場面では荒い顔を見せる。ただそれは、父を殺した兄の居場所を知る相手が挑発したために噴いた荒さであって、人物全体を病的な復讐狂として印象づけるほどではない。
敵の悪は十分にあるが、胸糞の濃さは最上級ではない。ダッチは父を殺し、弟から銃を奪い、逃げ続ける。悪党であることは疑いない。ただし執拗に尊厳を踏みにじる型ではなく、最後に討つべき仇として置かれている。敵役の重みはあるが、胸糞燃料の爆発力は控えめだ。
終盤の兄弟対決はしっかり決まる。高所を取ったダッチに対し、リンは不利な位置から崩して自分の手で仕留める。父から受け継いだ技術と記憶が最後の決着につながる。兄弟の因縁、父殺し、名銃の物語がここで一つに収束する。
後味は重さを残す。リンは生き残り、復讐も達成する。再出発の余地もある。ただ父は戻らず、兄を自分の手で殺した事実も消えない。虚無で終わる映画ではないが、平穏へきれいに戻ったとは言いにくい。
鑑定報告(Ver 1.3基準)
※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領 Ver1.3(概要)」をご覧ください。
| 1 不条理(被害者の無実性) | 5/5 |
| 2 喪失(奪われたものの重さ) | 4/5 |
| 3 被侮蔑(加害者からの見下し) | 3/5 |
| 4 標的(復讐対象の明確さ) | 5/5 |
| 5 敵の悪(情状酌量の余地) | 4/5 |
| 6 後味(結末のカタルシス) | 4/5 |
| 7 配役(復讐者の説得力) | 4/5 |
| 8 演技(感情の爆発度) | 4/5 |
| 9 演出(執行のスタイリッシュさ) | 4/5 |
| 10 伏線回収(因果応報の納得感) | 4/5 |
| 11 倫理の納得感(観客の同調率) | 5/5 |
| 12 敵の歯ごたえ(難易度と落差) | 4/5 |
| 基礎点合計(1〜12) | 50/60 |
基礎点の根拠
1 不条理:5/5
リンに落ち度はない。父を殺されたうえ、その相手が実の兄だ。理不尽さは十分に重い。
2 喪失:4/5
父を失い、家族の形が壊れている。重い喪失だが、配偶者や子どもまで同時に奪われる型ほどの壊滅ではない。
3 被侮蔑:3/5
ダッチはリンから銃を奪い、挑発し、終盤まで翻弄する。ただし人格を継続的に踏みにじる侮辱型の敵ではない。標準点が妥当だ。
4 標的:5/5
標的は終始ダッチ一人でぶれない。中盤で銃の遍歴が前に出ても、リンの怒りの中心は最後まで変わらない。
5 敵の悪:4/5
父殺しの時点で十分に重い。弟から銃を奪い、逃亡を重ねる悪党でもある。ただし胸糞を極限まで煮詰める型ではないため、満点までは置かない。
6 後味:4/5
復讐は達成され、リンは生き残る。ローラと共に再出発の余地もある。ただし父は戻らず、兄を自分の手で殺した事実も重い。救いはあるが、平穏へ戻ったとまでは言いにくい。
7 配役:4/5
ジェームズ・スチュワートは正統派の顔立ちのまま執念を抱えた男を演じている。伝説的な復讐者の顔ではないが、この映画の陰りにはよく合っている。
8 演技:4/5
スチュワートは怒りを大げさに爆発させず、抑えた追跡者として見せる。酒場で荒さが噴く場面も効いている。ダッチ側も必要な重さはある。
9 演出:4/5
アクションと空間の見せ方が手堅い。終盤の岩場の撃ち合いはよく決まる。ただし銃の遍歴を見せる時間が入るぶん、復讐の爆発力は少し割れる。
10 伏線回収:4/5
父から受け継いだ技術、兄弟の因縁、名銃の流転が最後の対決へ収束する。構造はきれいだが、驚きの連鎖より収束のうまさで見せる型だ。
11 倫理の納得感:5/5
父を殺した兄への復讐であり、観客がリンに同調する土台は固い。追跡は一直線で、筋も通っている。
12 敵の歯ごたえ:4/5
ダッチは射撃の腕が立ち、終盤では高所を取ってリンを追い詰める。簡単に倒せる敵ではない。ただし絶対的な怪物ではなく、強敵の範囲に収まる。
13 執行精度(倍率): ×4
最後はリン自身の手で決着をつける。不利な位置から崩して仕留めるため、執行としてはしっかりしている。ただし5倍のような絶対的不可避性ではなく、死闘の末の確実な制裁だ。
最終鑑定点:200/300(基礎点合計×執行精度)
格付け:C級(佳作)
総評
父を殺した兄を追い詰めて討ち取る太い軸を持った復讐西部劇だ。途中で名銃ウィンチェスターの遍歴が前に出るため感情の圧縮はやや緩むが、本筋はぶれない。終盤で兄弟の因縁と銃の物語が一つに収束し、本人の手で決着もつく。大爆発はしないが、標的の明確さ、本人決着、後味の救いが揃った佳作だ。
雑記
先住民族に追われてローラを置き去りにして逃げtスティーブは、遠くに味方がいるのを確認してローラの元に戻るが、誰もいなかったらどこまでも逃げていたに違いない。


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