狼よさらば 地獄のリベンジャー

邦題狼よさらば 地獄のリベンジャー
原題Death Wish V: The Face of Death
公開年1994
製作国アメリカ
監督アラン・A・ゴールドスタイン
主演チャールズ・ブロンソン

概要

デス・ウィッシュシリーズ5作目で最終章。ポール・カージーはポール・スチュワートと名前を変え、大学で建築学を教える教授となり、恋人であるデザイナーのオリビアとその娘チェルシーのいるニューヨークで暮らしている。だがオリビアの元夫でマフィアのボスであるトミー・オシェアとその一味がポール達の幸せな生活を破壊する。

この映画は前作『バトルガンM-16』よりもリベンジ映画としての要素が強まっている。前作は発端は彼女の娘の死だが、途中から組織同士の抗争へと話が広がっていった。今回ポールが追うのは、最初から最後までオリビアを殺してその娘を奪ったトミー・オシェアとその一味である。部下のチッキ、フレディ、ヴァスケスを順に片づけ、最後にトミー本人を片付ける。執行カタルシス型復讐劇としての骨格は、シリーズ後半ではいちばん素直である。

今回は敵役も良い。マイケル・パークス演じるトミーの存在感と胸クソ悪さが光っている。また、始末の付け方にも変化がある。青酸カリ、ラジコンサッカーボール爆弾、そして最後のアシッドプールと見せ場の作り方には工夫がある。それぞれの生活環境や家族関係などの背景もそれなりに描かれており、結果登場人物に深みが出ているのは執行カタルシス型リベンジ映画の燃料としてはプラスだ。

しかし、恋人殺しを燃料に使うというパターンはもう慣れてしまい、マンネリ感も否めない。ポール・カージーと恋人との関係は前作よりは丁寧に描かれているとは思うが、それでも喪失感を共有するまでは至らない。また、トミーとチェルシーの関係描写の浅さも残念だ。

※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領(概要)」をご覧ください。

1 不条理(過失相殺)4/5
2 喪失(損害規模)3/5
3 被侮蔑(ナメられ)4/5
4 報復対象(安定性)5/5
5 敵の悪(邪悪性)3/5
6 後味(生存希望)3/5
7 配役(適正顔)4/5
8 演技(感情伝達)3/5
9 演出(爆発の美学)4/5
10 伏線回収(因果応報の設計)3/5
11 倫理の納得感(観客同調)4/5
12 敵の歯ごたえ(障害強度)3/5
基礎点合計(1〜12)43/60

基礎点の根拠

1 不条理:4/5
被害は一方的で重い。ただしオリビアは、完全な無関係の一般人ではなく、マフィアのボスであるトミー・オシェアの元妻で、その支配の圏内に置かれている。

2 喪失:3/5
犠牲者はポールの彼女であるオリビア一人で、娘のチェルシーは拉致されるが助かる。燃料としては十分だが、壊滅的な損失までは行かない。

3 被侮蔑:4/5
トミーはポール・カージーが伝説の自警マンであり、そのうち復讐しに来ると自覚しながらも特別にガードを固めるようなこともせず、完全にポール・カージーの実力を見誤っている。

4 報復対象:5/5
ポールが追うのは最初から最後までトミー・オシェアとその一味である。途中で話が広がっても、撃つ相手は変わらない。

5 敵の悪:3/5
脅迫、暴行、偽警官を使った殺害、子どもの拉致。十分に悪質だが、広範囲に甚大な被害を積み上げる5点級の悪辣さではない。

6 後味:3/5
トミー一味は始末するが、オリビアは戻らず、娘のチェルシーとポール・カージーがともに暮らすのかどうかもわからず。

7 配役:4/5
ブロンソンは年齢を感じさせるが、その疲れた顔が今回はむしろ合っている。徹底的に身近な人を失ってきた男の顔だ。マイケル・パークスのトミーの胸クソさもよく、敵役の存在感は強い。

8 演技:3/5
ブロンソンは過去作と比べて要所要所で怒りと悲しみが表に出ており、より人間味を感じられる。

9 演出:4/5
今回は執行方法が青酸カリ、ラジコン爆弾、最後のアシッドプールとバリエーションがあり、銃一辺倒から変化があり、マンネリ防止につながっている。

10 伏線回収:3/5
大きな仕掛けの映画ではないが、オリビアの顔の損傷から始まり、最後はトミー自身の顔を瓶で傷つけたうえでアシッドに落とす。細かく編んだ脚本ではないものの、結末への流れは見えやすい。

11 倫理の納得感:4/5
検察は買収され、警察は16年も逮捕できず、司法に対する信頼性は失墜しており、この状況を解決できるのはポール・カージーしかいないのは明らかである。

12 敵の歯ごたえ:3/5
トミーとその手下は超一流の難敵というほどではない。存在感はあるが、歯ごたえは標準止まりである。

最終鑑定点:172/300(基礎点合計×決着成立度)

格付け:C級(佳作)

『狼よさらば 地獄のリベンジャー』は、シリーズ中では最も王道の執行カタルシス型リベンジ映画だ。標的が最初から最後まで明確で、敵役の存在感も強く、決着もきちんとポールの手でつく。3作目ほどの派手さはないが、復讐劇としての筋はむしろこちらの方が通っている。
それでも点数が伸びないののは、またもや恋人殺しを燃料に使う型を繰り返してマンネリ化していることと、周辺の人間関係をもう一段深く積めていないことによる。復讐は果たすのだが、ポール・カージーの怒りと喪失を観客と深く共有するところまでは届かない。

雑記

全5作、細かいことは抜きにして、あくまで執行カタルシス型リベンジ映画かどうかで観た場合、個人的には本作が一番だ。世間の評価はワンパターンだの地味だの恐ろしく低いのだが、そういう芸風だと割り切ってそれを味わう映画なのだ。デス・ウィッシュ6、7とどういうことになってしまうのか観てみたかった。

コメント