作品情報
| 邦題 | 完全なる報復 |
| 原題 | Law Abiding Citizen |
| 公開年 | 2009 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | F・ゲイリー・グレイ |
| 主演 | ジェラルド・バトラー、ジェイミー・フォックス |
概要
『完全なる報復』は、前半の怒りの積み上げが見事な映画である。クライド・シェルトンは、自宅に押し入った二人組に妻と娘を殺される。犯人は逮捕されるが、クライドの意に反して検察は妻と娘を殺害したダービーと司法取引を結び、手を下していないもう一人を死刑にする。当然クライドの怒りは犯人だけでなくニックや司法関係者にも向かう。
ただし、この映画は最後で大きく腰砕けになる。刑務所の中から外を揺さぶる仕掛け、ダービーに対する私刑、裁判官の携帯電話の件など、途中までは見せ方に勢いがある。ところが、情報屋にクライドを止めるには頭を撃つ以外にないという話をさせ、最後はニックに拳銃まで持たせておきながら、クライドは自身の爆弾で爆死、ニック夫妻は娘の演奏会である。散々積み上げた火薬を最後ドブに捨てて終わりだ。
鑑定報告(Ver 1.4基準)
※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領(概要)」をご覧ください。
| 1 不条理(過失相殺) | 5/5 |
| 2 喪失(損害規模) | 5/5 |
| 3 被侮蔑(ナメられ) | 5/5 |
| 4 報復対象(安定性) | 5/5 |
| 5 敵の悪(邪悪性) | 5/5 |
| 6 後味(生存希望) | 1/5 |
| 7 配役(適正顔) | 4/5 |
| 8 演技(感情伝達) | 4/5 |
| 9 演出(爆発の美学) | 4/5 |
| 10 伏線回収(因果応報の設計) | 2/5 |
| 11 倫理の納得感(観客同調) | 4/5 |
| 12 敵の歯ごたえ(障害強度) | 4/5 |
| 基礎点合計(1〜12) | 48/60 |
基礎点の根拠
1 不条理:5/5
自宅で妻と娘を殺され、それを目の前で見せつけられる。被害者側に落ち度はない。これ以上ないほど理不尽な出発点である。
2 喪失:5/5
最愛の妻と娘を一度に失い、しかも司法にも裏切られた損害は最大級である。
3 被侮蔑:5/5
犯人は家族を奪い、ニックはクライドの意向を無視して主犯と司法取引を行うなどクライドに対する敬意が微塵も感じられない。
4 報復対象:5/5
クライドの怒りの向き先は最初から一貫している。相手は犯人二人だけではない。主犯と司法取引を結び、正義を売り渡した検察と司法側関係者も含めて報復対象である。相手の数は多いが、「誰に報いる話か」は最後までぶれない。
5 敵の悪:5/5
本作の悪は重い。ダービーは妻子を襲った主犯であり、殺人に加えて性的加害まで行う外道である。さらに、ニックはクライドの意向を無視して主犯と司法取引を進める。実行犯の悪と、権力側の横暴が重なっている以上、5点でよい。
6 後味:1/5
クライドは最後ニックに殺される。さらに、ニックは家族団欒のエンディングまで用意される。家族を奪われ司法にまで裏切られたクライドには全く救いがない。後味は最悪どころか、観客に対する挑戦と理解した。
7 配役:4/5
ジェラルド・バトラーの才能をひけらかさない感じが良い。説得力は十分あるが、5点満点とまでは言わない。
8 演技:4/5
バトラーには力がある。ジェイミー・フォックスも、出世欲にとらわれた検事として機能している。全体に見応えはある。
9 演出:4/5
犯人出所後の私刑の流れ、クライドとニックの駆け引き、独房から外を揺さぶる展開など、場面ごとの引きは強い。
10 伏線回収:2/5
小さな前振りは拾っている。裁判官の携帯電話の件はその典型である。だが、終盤のいちばん大きい前振りを落としている。情報屋によるクライドを止めるには頭を撃つしかないという話と、ラストで拳銃を持ったニックとクライドのシーンを見せておきながら回収しないのは不可解である。
11 倫理の納得感:4/5
映画は基本的に観客をクライド側へ立たせる作りになっている。妻子を殺した主犯を司法取引で逃がされた時点で、正義はクライド側にあると受け取りやすい。ただし、後半ではサラのように、ニックのやり方に疑問を持ちながら逆らえず巻き込まれる側まで犠牲になる。ここはニックの責任でもあるが、観客が最後まで迷いなくクライドに同調できるほどきれいではない。4点が妥当である。
12 敵の歯ごたえ:4/5
相手は犯人一人では終わらない。検察、司法、警察、市政まで含むため、壁としては十分に厚い。簡単な相手ではない。
13 決着成立度(倍率): ×2
クライドは自分の手で主犯を始末し、司法側にも大きな打撃を与える。さらに司法取引に関与していた裁判官や検察のメンバーを始末する。そこまでは成立している。ただ、本作で最後に倒さなければならない相手はニックである。映画はそこへ向かう流れを終盤まで作っておきながら、クライドはニックを仕留め切れず、逆にニックにやられる形で終わる。途中までの達成はあるが、最後の決着を落としている以上、2.0倍が妥当である。
最終鑑定点:96/300(基礎点合計×決着成立度)
格付け:D級(不発)
総評
『完全なる報復』は、序盤から中盤にかけては強い復讐映画である。家族惨殺、遺族感情を無視した司法取引による主犯格の減刑という流れで怒りの燃料を積み上げていく。脚本に都合の良さは多々あるが、補ってなお余る燃料の積み上げである。
問題はラストである。最初からクライドが正義、ニックを不正義として物語は進んできた以上、最悪でもニックが自分の手でクライドに決着をつけるか、ニック自身も取り返しのつかない傷を負うか、そのどちらかで終わるべきだった。ところが実際は、ニックは自分の手は汚さずにクライドを始末し、しかも、娘の演奏を聴いているニック夫妻を見せて終わるとは予想していなかった。
雑記
最後、ニックの娘に罪はないが、ステージで演奏中にチェロが爆発するに違いないと思ってたけど、しなかった。いや、演奏が終わってスタンディングオベーションのあとに爆発するのかと思ったが、しなかった。まさかあのまま終わるとは思わなかった。実はクライドは死んでいなくてニックと対決する続編でも作ったらいいのに。


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