ロード・トゥ・パーディション(2002年アメリカ)

邦題ロード・トゥ・パーディション
原題Road to Perdition
公開年2002
製作国アメリカ
監督サム・メンデス
主演トム・ハンクス、ポール・ニューマン

概要

主人公マイケル・サリバン(トム・ハンクス)はアイルランド系マフィアのボス、ジョン・ルーニー(ポール・ニューマン)に育てられた殺し屋だ。ルーニーの実子コナー(ダニエル・クレイグ)は、実子でありながら父の愛情がサリバン一家に向いていることに嫉妬している。

ある夜サリバンの長男がコナーの殺人現場を目撃したことがきっかけとなり、コナーは口封じを口実にサリバン家を襲撃。妻アニーと次男ピーターを射殺する。長男は学校の居残りで難を逃れる。

ルーニーはサリバンに大金を渡して海外に飛ぶように伝えるが、サリバンはそれを拒否してコナーに対する復讐を決意し、結果組織全体を敵に回す。そしてルーニーが放った殺し屋マグワイヤの追跡をかわしながら長男を連れてその機会を伺う。

※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領(概要)」をご覧ください。

1 不条理(過失相殺)4/5
2 喪失(損害規模)4/5
3 被侮蔑(ナメられ)3/5
4 報復対象(安定性)5/5
5 敵の悪(邪悪性)4/5
6 後味(生存希望)3/5
7 配役(適正顔)5/5
8 演技(感情伝達)5/5
9 演出(爆発の美学)5/5
10 伏線回収(因果応報の設計)3/5
11 倫理の納得感(観客同調)5/5
12 敵の歯ごたえ(障害強度)4/5
基礎点合計(1〜12)50/60

基礎点の根拠

1 不条理:4/5
サリバンの妻アニーと次男ピーターは完全に巻き添えだ。ただしサリバン自身はマフィアの殺し屋であり、完全に無垢な日常が一方的に壊された型とは言えない。

2 喪失:4/5
妻アニーと次男ピーターを失う。家庭は壊れるが、長男ジュニアは生き残る。損失は重いが、家族全滅ではない。

3 被侮蔑:3/5
コナーはサリバンの妻子を口封じという名目で殺す。長く執拗に侮辱を積み上げる型ではない。

4 報復対象:5/5
きっかけはコナー・ルーニー、その後ジョン・ルーニー、ハーレン・マグワイアの三人に定まっており、物語を通じてぶれない。実行犯、実行犯を庇う父親、サリバンを狙う殺し屋という三つの役割が明確である。

5 敵の悪:4/5
コナーは妻子を撃ち殺した実行犯として十分に悪い。ただしコナーは嫉妬と未熟さで暴走する跡継ぎ息子として描かれる。サリバンを追うカメラマンで殺し屋のマグワイアは異様だが中心ではない。ジョン・ルーニーには父性の側面があり、純粋な邪悪さによるものではなく苦渋の選択の結果だ。

6 後味:3/5
サリバンは死ぬ。長男は道中世話になった老夫婦の農場に保護を求め、二度と銃を持たずに生きる。完全絶望ではないが、父は帰らない。ジャンル標準である。

7 配役:5/5
トム・ハンクスが殺し屋を演じる違和感そのものが配役の核になっている。ポール・ニューマンは父性と権力を一つの顔に収め、息子を差し出せない老マフィアの重みを画面に出す。ダニエル・クレイグの嫉妬深く、精神的に未熟で父親に叱られ組織崩壊の原因を作るようなダメ息子役も意外性がある。

8 演技:5/5
ハンクスとニューマンのピアノ連弾シーンは会話が無くてもお互いの信頼関係が滲み出る。雨のルーニー処刑の場面もニューマンの「お前で良かった」の一言が胸を打つ。

9 演出:5/5
大恐慌期の冬の光と陰を画面に残す。雨のジョン・ルーニー処刑場面は台詞を排し、表情と雨音と銃声だけだ。コナーを射殺するシーンも、浜辺の家のマグワイア襲撃も静けさの中で決まる。

10 伏線回収:3/5
コナーの横領が帳簿から発覚する流れは物語の骨格として機能しているが、基本的に本作は伏線を張って回収する型の作品ではない。サリバンと長男の関係をベースに、サリバン一家とジョン・ルーニーの親密な関係が崩れる過程、ジョン・ルーニー親子の関係、父子の逃走そのものが主軸であり、因果応報の設計が精密というほどではない。

11 倫理の納得感:5/5
本作はマフィア映画である。その前提で見るなら、サリバンの行動に筋の通らない部分はない。家族を殺したコナー、息子を庇ったジョン・ルーニー、追跡者マグワイアの三人に報いを返す流れも明快である。

12 敵の歯ごたえ:4/5
コナー自身は未熟だが、彼を庇護する組織全体、カポネ側のニッティ、職業殺し屋マグワイアと、サリバンを取り囲む包囲網は厚い。サリバンは銀行強盗と帳簿奪取でこの包囲を崩していく。勝利は自動ではなく、策略と執行の両方を要する。

最終鑑定点:225/300(基礎点合計×決着成立度)

格付け:B級(良作)

『ロード・トゥ・パーディション』は、マフィアとその家族の人間模様、執行の完成度とリベンジ映画の骨格を非常に高いレベルで両立させた作品である。サリバンの標的も動機も具体的で、決着も主人公自身の手でつく。だが、育ての親であるジョン・ルーニーも殺さざるを得なくなってしまった状況が痛恨の極みだ。雨が降る夜にポール・ニューマンにマシンガンの引き金を引くなんとも言いがたいトム・ハンクスの複雑な表情が印象に残る。

『Road to Perdition』のPerditionは本作の最終目的地であるミシガン湖畔の架空の町の名前であり、英語で「永劫の破滅」「地獄落ち」を意味するキリスト教神学の語でもある。サリバン父子が目指す退避先である「パーディション」と、殺人を重ねるサリバンが堕ちていく「破滅」が、タイトル一語に重ねられている。破滅への道ではあるが、長男が生き延びたことで救いが残される作品だ。

雑記

トム・ハンクスが殺し屋、ポール・ニューマンがマフィアのボス、ダニエル・クレイグがボンボンのバカ息子、ジュード・ロウは死体に執着する気味の悪い敏腕殺し屋、それぞれ斬新なキャスティングなのもこの映画の特徴だ。斬新だが見事にはまっているのは演出の緻密さはもちろんのこと、それぞれの俳優の才能だろう。とりわけイメージとのギャップが大きいのがダニエル・クレイグで、わたし的には完全にジェームズ・ボンドの人であり、ロンドンオリンピックでエリザベス女王をエスコートして一緒に空から降ってきた人なのだ。

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