作品情報
| 邦題 | ブルー・レクイエム |
| 原題 | Le Convoyeur |
| 公開年 | 2004 |
| 製作国 | フランス |
| 監督 | ニコラ・ブークリエフ |
| 主演 | アルベール・デュポンテル |
概要
主人公アレックスは、現金輸送会社ヴィジラントに新人警備員として入社する。ヴィジラント社は過去に何度も現金輸送車を襲撃され、警備員が複数殺されている。アメリカの会社に買収されるという噂もあり、職場は不信に満ち、スパイがいるのでは無いかと社員同士も互いを疑っている。アレックスも同僚と距離を置き、自分のことをほとんど語らない。アレックスがヴィジラント社に入社した真の目的は、かつて現金輸送車襲撃の現場で巻き添えになり息子ジュールを撃ち殺した犯人と社内の協力者を特定して復讐することだ。
鑑定報告(Ver 1.4基準)
※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領(概要)」をご覧ください。
| 1 不条理(過失相殺) | 5/5 |
| 2 喪失(損害規模) | 4/5 |
| 3 被侮蔑(ナメられ) | 3/5 |
| 4 報復対象(安定性) | 4/5 |
| 5 敵の悪(邪悪性) | 4/5 |
| 6 後味(生存希望) | 2/5 |
| 7 配役(適正顔) | 4/5 |
| 8 演技(感情伝達) | 3/5 |
| 9 演出(爆発の美学) | 3/5 |
| 10 伏線回収(因果応報の設計) | 3/5 |
| 11 倫理の納得感(観客同調) | 4/5 |
| 12 敵の歯ごたえ(障害強度) | 3/5 |
| 基礎点合計(1〜12) | 42/60 |
基礎点の根拠
1 不条理:5/5
アレックスの息子ジュールは、現金輸送車襲撃の現場で殺される。ただ現金輸送車襲撃現場にたまたま居合わせ目撃者として巻き添えになった。被害側に落ち度はない。
2 喪失:4/5
アレックスは息子を失う。息子の母ソフィーも事件後に精神に異常をきたし、家庭は事件前の形には戻らない。
3 被侮蔑:3/5
強盗団や内通者ニコルは金のために殺人を犯す極悪非道だが、アレックスを長く見下したり、人格を否定したりする映画ではない。終盤で内通者ニコルがアレックスを金目当ての男だと誤解する場面はあるが、それも侮辱というより完全な誤解だ。
4 報復対象:4/5
ターゲットは息子を殺した現金輸送車襲撃犯と、襲撃を成立させた内通者だが、襲撃犯達の詳細は描かれない。
5 敵の悪:4/5
金目当てに情け無用で人を殺す襲撃犯達は非常に残忍だ。内通者ニコルも、社員の立場を利用して襲撃犯達を社内に入れるなど、極めて重要な役割だ。
6 後味:2/5
アレックスは襲撃犯たちに立ち向かい、社員の援護がありながらも概ね倒したように見えるが、内通者のニコルはアレックスによって現金保管部屋に閉じ込められ生きており、恐らく逮捕されるだろう。アレックス自身も被弾しており、息子が殺された現場まで向かって、そこで倒れる。家族は戻らず、社員の多くは襲撃の巻き添えになって死ぬという壮絶なラストだ。
7 配役:4/5
主人公アレックスを演じるアルベール・デュポンテルは、温和だが何を考えているかよく分からない正体不明なキャラクターがはまっている。
8 演技:3/5
アレックスは多くを語らないが、息子を殺された恨みを果たすという意気込みは伝わる。復讐の鬼オーラが滲み出るというわけでもなく、気が弱い悩める復讐者というキャラクターをよく演じている。
9 演出:3/5
フランス映画らしい淡々としたペースで会話中心に人間関係を描きながら物語が進み、ラストの殺戮や反撃シーンも内容は凄惨だが、過剰な演出を抑えており、むしろリアリティがあるように感じた。
10 伏線回収:3/5
アレックスがヴィジラントへ入った理由、ホテルの資料、社員への観察、謎の電話、ミイラの自殺、ニコルの誤解は終盤につながる。本来ニコルの相棒になるはずだったのはアレックスではなく、ミイラである。ミイラの自殺で穴が空き、そこにアレックスが入り込む。流れはつながっているが、アレックスがすべてを設計して犯人側へ近づいたわけではない。ニコルの勘違いや偶然が重なって復讐対象に近づく構造である。
11 倫理の納得感:4/5
アレックスの復讐に違和感はない。被害は一方的で、復讐の筋も通っている。
12 敵の歯ごたえ:3/5
強盗団は会社内部に内通者を置き、現金輸送車に身を潜めて社内へ入り込む。計画性があり侮れない。実戦経験の少ない社員達の反撃は限定的だ。また、犯人グループの襲撃は手慣れた様子ではあるが、隙が無いというわけでもない。
13 決着成立度(倍率): ×3
アレックスの復讐は一応成立したように見える。だが、そのプロセスは本人の設計ではない。ミイラの自殺によってニコル側の相棒の席が空き、ニコルがアレックスを金目当ての男だと読み違えたことで、アレックスは犯人グループの核心に迫る。しかも、相手を逃げ場なく追い詰めたというより、ニコルの誤認によって、犯人グループの襲撃にアレックスの復讐がなし崩し的に組み入れられた恰好だ。
最終鑑定点:126/300(基礎点合計×決着成立度)
格付け:D級(不発)
総評
復讐者の意図は分かるが手段と目的がよくわからない不思議な復讐映画だ。主人公の目的は息子を殺した襲撃犯一味に対する復讐であることはわかるのだが、正体を偽って会社に潜入したものの、誰をどうするかなど、具体的な復讐計画は何も見せずにこの物語はすすむ。人を撃ったことなど無い元銀行マンの主人公が、若い襲撃犯を射殺してしまい、ショックを受けて一度は退職を決意する。その直後に戻ったホテルの部屋に1本の電話がかかってくる。相手も内容も不明。だが、その電話をきっかけに復職する。電話の相手は誰だったのか不明だが、おそらくニコルがアレックスを相棒として使うために復職させようとしたのだろう。
本作のストーリー上の重要なポイントはニコルの盛大な勘違いだ。最初アレックスを買収側のスパイと疑い、買収側の人間が別にいると判明した後、今度は金目当ての男だと誤解する。その大いなる勘違いと、ミイラの自殺による代役抜擢という偶然が重なって、アレックスが犯人グループに迫るきっかけになり、しかもニコルや襲撃グループの失敗の原因にもなる。ミイラが自殺していなかったらアレックスは犯人達の襲撃を受けて死んでいたかもしれない。
この映画でアレックスは復讐を成し遂げるためにヴィジラント社に入社すること以外に何をしたのか。極論を言うと、何もしていないのでは無いか。ホテルの壁に社員のプロフィールを貼って特定しようと観察はしていたが、その結果犯人を特定したわけでも無く、何か罠を仕掛けたわけでも無い。ただヴィジラント社の社員として仕事をしていただけである。それなのに復讐ミッションはいちおう形の上では果たされるという希有な復讐映画だ。
雑記
フランスの映画って説明が足りなくてよく分からないから(偏見)昔は積極的に敬遠していたが、最近はそうでもない。ただ、観れば厄介なことになる。何が厄介かというと、まさにこれを書くのが難しい。今まさに手こずっている。進まない。時間がかかる。考えてもよく分からないシーンや意図は調べるが、それでもわからないこともある。そうなると自分レベルだともうお手あげだ。だから想像でいろいろ書くしかないけれども、そもそも全く異なる文化の人が作った映画の内容をどう想像するんだという深みにはまる。フランス映画沼は恐ろしい。


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