ファースター 怒りの銃弾(2010年アメリカ)

ファースター 怒りの銃弾(2010年アメリカ)
邦題ファースター 怒りの銃弾
原題Faster
公開年2010
製作国アメリカ
監督ジョージ・ティルマン・Jr.
主演ドウェイン・ジョンソン

概要

ドライバーは兄のゲイリーらと共に銀行を襲撃するが、その計画はゲイリーの恋人マリーナによって外部に漏れていた。情報をもとに待ち伏せていたスレイド一味に襲撃され、兄を殺された上に自らも頭部を撃ち抜かれたドライバー。奇跡的に一命を取り留めた彼は、銀行強盗の罪で10年の服役を終え、出所したその日から冷徹な復讐劇を開始する。

※採点基準の概要は「リベンジ映画鑑定要領(概要)」をご覧ください。

1 不条理(過失相殺)2/5
2 喪失(損害規模)3/5
3 被侮蔑(ナメられ)3/5
4 報復対象(安定性)4/5
5 敵の悪(邪悪性)3/5
6 後味(生存希望)3/5
7 配役(適正顔)5/5
8 演技(感情伝達)4/5
9 演出(爆発の美学)4/5
10 伏線回収(因果応報の設計)3/5
11 倫理の納得感(観客同調)4/5
12 敵の歯ごたえ(障害強度)4/5
基礎点合計(1〜12)42/60

基礎点の根拠

1 不条理:2/5
金を奪われ、兄を殺され、自らも頭を撃ち抜かれ、しかも10年服役するという散々な目に遭っているが、そもそも発端は兄が計画した銀行強盗である。犯罪行為の報いと言えなくもないため、理不尽に巻き込まれた純粋な被害とは言えない。

2 喪失:3/5
兄の命と、頭部を撃たれたことによる身体的ダメージ、そして10年という歳月を刑務所で失っている。失ったものの大きさは確かだが、平穏な日常を一方的に奪われた被害者ではなく、自ら犯罪に手を染めた結果といえる。

3 被侮蔑:3/5
目の前で兄は喉を切られて殺され、自分も頭を撃ち抜かれるという屈辱を味わっているが、これもある意味自身が犯した犯罪の報いと言える。

4 報復対象:4/5
標的は、金を奪い、兄の命を奪い、自分を死の淵に追いやった事件の関係者たちだ。出所したドライバーがリストを基に一人ずつ確実に処理していき、最終的に黒幕である悪徳警官へと行き着く構図は極めて明快だ。しかし、すべての元凶であり、兄を裏切って情報を漏らした、当時兄の恋人であったマリーナが報復の対象から外れている点は、リベンジ映画として大きな取りこぼしと言わざるを得ない。

5 敵の悪:3/5
金を奪い、兄は喉を切って殺し、ドライバーは頭を撃つという行為そのものは極悪だ。また、兄ゲイリーの恋人でありながら、ゲイリーを売ったマリーナの裏切りがそもそもの発端であり、仲間と見せかけた裏切り行為は非常に悪質度が高い。とはいえ、あくまで犯罪者同士の奪い合いであり、善良な市民を一方的に蹂躙するような絶対悪とは異なる。

6 後味:3/5
最終的に因縁の悪徳警官を仕留めて復讐は完遂されるが、死んだ兄も、奪われた10年という歳月も戻ることはない。かつての恋人はすでに別の家庭を築いており、失った子供への未練も残る。すべてを終えたドライバーが一人去っていくラストは虚無感が漂う。

7 配役:5/5
ドウェイン・ジョンソンの圧倒的な体格と威圧感のある風貌が、このキャラクターに見事にハマっている。出所直後からほとんど言葉を発せず、ただ標的に迫り、立ち塞がるだけで凄まじいプレッシャーを放つ。

8 演技:4/5
ドウェイン・ジョンソンは、声を荒らげることもなく、煮えたぎる怒りをあえて爆発させない寡黙な復讐者という役どころを実に見事に演じている。

9 演出:4/5
出所から車と銃の手配、そして最初の処刑へと至る導入のスピード感が素晴らしい。ドライバーが脇目も振らずに次から次へと標的を倒す無駄の無さは良いのだが、ドライバーの怒りや敵の胸クソを積み上げるターンはもう少しじっくり描いても良かったのでは。
10 伏線回収:3/5
頭部に銃弾を撃ち込まれた過去と外科手術による金属プレート、そして追う側の悪徳警官の正体と、ドライバーの頭の同じところを撃つ失態という要素は、終盤に向けて過不足なく回収される。リストに沿って敵を潰していくプロットも明快だ。ただ、緻密に張り巡らされた伏線や知略で魅せるタイプではなく、あくまで目の前の標的を順番に処理していくシンプルな構成が主体となっている。

11 倫理の納得感:4/5
ドライバー自身が銀行強盗の当事者であるため、完全に同情できる被害者ではない。しかし、彼の復讐の矛先はあくまで10年前の事件に関わった者に限定されており、無関係な人々を巻き込む暴挙には出ない。また、現在は深く改心して他者を救う生き方をしている標的に対しては、引き金を引かない柔軟さも見せる。盲目的な殺戮マシーンではなく、状況次第で執行の是非を判断する柔軟さは倫理的にはプラス要素だが、リベンジ映画的にもプラスとは必ずしも言えない。改心したという神父の化けの皮を剥がすという方法もあったはずだ。

12 敵の歯ごたえ:4/5
リストに名を連ねる個々の標的自体はさほど強力ではない。しかし、復讐劇の裏で暗躍する悪徳警官の存在や、ドライバーを狙って執拗に迫る殺し屋の存在によって敵の難易度は高く保たれている。派手なカーチェイスや激しい銃撃戦も用意されており、主人公が無抵抗な弱者を一方的に無双するだけの退屈な展開ではない。

最終鑑定点:168/300(基礎点合計×決着成立度)

格付け:D級(不発)

『ファースター 怒りの銃弾』は、骨組みだけを見れば極めてオーソドックスなリベンジ映画だ。兄を殺され、自らも頭部を撃ち抜かれた男が、10年の刑期を終えて出所と同時に仇討ちへ向かう。プロットは明快そのものだ。主人公のドライバーは余計なことは語らず、マッスルカーを駆り、標的に向かってただ引き金を引く。物語が非常にテンポ良く進むため退屈さを感じさせない。

その一方でこのテンポの良さが裏目に出ている。ドライバーと兄の絆、裏切られた瞬間の凄惨な記憶、そして刑務所で10年間煮詰め続けたはずの怨念が回想シーンだけで処理されてしまう。観客の中でドライバーの怒りと苦しみと敵の胸クソ悪さが十分に積み上がる前に、ドライバーは標的を仕留めてしまっているのだ。

致命的に惜しいのがすべての元凶であるマリーナの扱いだ。彼女は兄ゲイリーの恋人でありながら犯人に情報を流し、結果として兄ゲイリーを死に追いやり、ドライバーの頭を撃ち抜かせ10年も服役するはめになった元凶だ。彼女は準学士号を取得して子供と新しい生活を始める予定の彼女は設定的にはなかなかの胸クソ燃料にもかかわらず、本作はこのマリーナを復讐ミッションの本線上に置かずに、壊れかけた家族の関係を描いて悪徳刑事のバックグラウンドにしてしまっている。子供がいるから扱いが難しくなってしまうのであって、ここは貴重なカタルシス用の燃料にしてほしかったところだ。

雑記

リベンジの本筋とはあまり関係がないので触れなかったが、殺し屋がなかなか味わい深いキャラクターだ。子供の頃から脚に障害があり、おそらく大手術をして克服し、シリコンバレーあたりでベンチャー企業を立ち上げ大成功して会社を売却、大金持ちになって実質リタイアし、エベレストみたいな山に登頂してみたり、世界で10人しか出来ないヨガのポーズができるようになったら、もうヨガはやめると言ってみたり、飽きっぽくてとにかく自己実現が生きがいの男だ。つまり資格を取って仕事に生かすのではなくて、資格を取ることが目的みたいなやつだ。殺し屋もそのノリでやるもんだから、案の定映画の中で浮きまくっている。自己実現のために殺し屋を始めてみたけどヨガとは違って、何でも出来る俺様にもさすがに厳しい世界だったということがようやく分かって足を洗って新婚生活に戻るという。ドライバーかもしくは正体がばれた悪徳警官に殺されて新婚早々彼女が嘆き悲しむとかそういうオチかなと思って観ていたが、何もない。ちなみに96時間のリーアム・ニーソンの娘役が殺し屋の彼女役で、それならなんかやらかすかと思って期待していたけど、何もない。殺し屋は悪徳警官に対してもう引退するから連絡するなと言い残し、彼女に帰るコールをして家路につく。この『あいつはいったい何だったんだ感』という意味では、パニッシャー(2004)であっという間に殺されるギターを持った流し風の殺し屋に近いものがある。

コメント